2022年11月、チャット生成AI「ChatGPT」がリリースされてから約1年が経ちました。
卒業論文やレポートの作成に利用してみた方、お客様へのお詫びのメール本文を代筆してもらった方、データ集計用のマクロを組んでもらった方など、実際に使ってみた方はその完成度の高さに驚いたのではないでしょうか。
それと同時に「こんなに簡単にAIがやってくれることが増えるなら、人間の仕事って何が残るんだろう」と思われたかもしれません。
それまでも「AIの登場で人間の仕事の領域はどんどん減っていく」「10年後にはなくなる仕事がある」といった話は、ITの発展とともに言われ続けてきました。
- 「長く働ける会社はどうやって見つけたらいいですか」
- 「転職に困らないスキルがつく会社に入りたいです」
- 「キャリアアップしないとこれから先ヤバいと思うんです」
昔から就活中の学生さんや今の会社や仕事に危機感を抱いている若手社会人のみなさんが抱え続けてきたお悩みですが、ChatGPT登場でさらにその「現実味」が増して、将来の仕事に不安を感じる方が増えているような気がします。
「どんな仕事や会社を選んだら、将来も安定して働き続けられますか」
そんな質問にキャリアコンサルタントの私がどうおこたえしているか、まとめてみたいと思います。
何年先のことまで考えたらいい?
「将来」この言葉に、みなさんは何年先までをイメージしますか?
22歳の新卒学生さんなら、定年65歳までの43年後でしょうか。
Googleの創業は1998年、Amazonの創業は2006年です。こんなに世界的に大きな会社が、今から43年前にはまだ存在もしていませんでした。
一方、どんな大きくて「安定している」という印象がある会社でも、絶対に大丈夫ということはありません。
今大学3年生、21歳の方が小学生の頃、航空系・運輸系志望の学生さんなら一度は憧れるJAL(日本航空)が経営破綻したことを覚えていますか? 2010年のことでした。当時は多くの社員がJALを離れることになりました。2008年に倒産した投資銀行リーマン・ブラザーズも、外資系を志向する学生の憧れの会社だったのです。
何が言いたいかというと、30~40年といった長いスパンで「安定」を見通すことなど最初から誰にも期待できないということです。
できないことを探すことほど時間を無駄にすることはありません。
ChatGPTを作る人、使える人
今ChatGPTをはじめとする生成AIの開発エンジニアの人たちがスキルアップできる職場を探すことは難しくないでしょう。高額な報酬も見込めるはずです。
しかし、そもそもプログラミングに全く興味がない方が「今」エンジニアになるための勉強を始めたからといって、世界の第一線で仕事を得るのは現実的ではないでしょう。そもそも仕事に興味もないのに「安心のためだけにエンジニアになりたい」とも思いませんよね。
ChatGPTを「作る人」だけが「生成AIで仕事をしている人」ではありません。
ChatGPTというツールをどう使うか。その使い方に精通している人もまた、今求められている人材です。「自分ならこう使う。こんな風に今の仕事に役立てることができる」そんな行動ができる人が「これからもAIに仕事を奪われない人材」です。
「今」夢中になれることにこだわる
これからどんなにAIが発達しても、AIにとって相性の悪い仕事はあります。
人が介在することそのもの、つまりコミュニケーションに価値がある仕事、または今までにない新しい価値を生む仕事です。
具体的にどんな仕事を思い浮かべますか?考えるヒントとして、いくつか例を挙げてみましょう。
自分が好きなことで勝負する
「まさかコレを仕事にできると思っていなかったけど……」趣味と仕事をつなげやすくなったのはインターネットやSNSがあればこそです。
インターネットがあることで、昔はどのように流通させればよいかわからなかった「レアアイテム」を好きな人同士で流通させられるようになりました。流通があれば、そこに商機も生まれます。「この分野に関わることならだれにも負けない」そんな「好き」なことはある人は、今までよりも仕事に活かせるステージを拡げられるはずです。
自分が実現したいことを追求する
日本国内でも多くの人が利用する「Uber」が登場したのは2009年のことです。創業者の「タクシーが捕まらない!」という課題への気づきから生まれたサービスは、たった数年で、世界中で知らない人がいない巨大サービスに成長しました。
AIができないこと、それは課題の発見です。世の中をこんな風に変えたい。こんなサービスがあればいいのに。どんな小さなことでも、自分が「この課題に取り組みたい」と思えること、それにチャレンジできる環境があることがスキルアップにつながるでしょう。
多くの仲間と支えあう
好きなことを続けることも、実現したいことに取り組むことも、長期的に楽しめるかに大きく影響するのが一緒の時間を過ごす仲間の存在です。
① 自分が好きなことで勝負する
② 自分が実現したいことを追求する
③ 多くの仲間と支えあう
この3つのポイントがあり、自分にとって「今、夢中になれる」と思える仕事が、数十年後のあなたを大きく飛躍させる仕事になるのではないでしょうか。
ここで多くの方から「で、具体的にどういう会社のどういう仕事か考えるのが大変なんですけど!!」という心の声があがるのもわかります。
- 「私より〇〇が好きなひとなんていっぱいいるし……」
- 「実現したいことはない。働きやすくてそこそこお給料が出る会社を探したい」
- 「仲間?できれば在宅ワークでネコチャンと仕事したいですけど?」
どれもごく普通の反応です。
ふだん、大学キャリアセンターの相談員という立場で特定の会社や職種をオススメすることはありません。万人に共通して「良い会社」などないからです。それでも時々「この会社は面白い会社だな、いい会社だな」と思うことがあります。
そのなかのひとつがこの記事の依頼主、トレジャーファクトリーです。
好きなことに夢中になり続けている人、新しい挑戦に背中を押された人、自分ができることに愚直に取り組んでいる人……JOB STORYを通じて、たくさんの社員の方のインタビューを読み、たくさんの「仕事で成長している人」がいると感じたことがその大きな理由のひとつです。
さらに、リユースショップは「人」が必要な仕事です。AIに「5年前に発売されたお菓子のノベルティについていたおもちゃ」の価値など判定できません。判定できるのは、一定数のコレクターがすでに存在し、その価値が確立されたものだけです。
そして、ビジネスとしても、日本発でこれから世界にどんどん広まっていく分野でしょう。SDGsな事業分野はこれからの成長企業であり、リアルに「日本の消費の今」を見ることができる店舗は、インバウンドの海外旅行客にも注目される可能性があります。
今「やりたいことなんてない」という人も、伸びていく業界で「一緒に頑張ろうよ」と声をかけてくれるメンバーがいる職場で働くことで、自分のやりたいことがみえてくるかもしれません。
私が特にお気に入りのインタビュー記事を紹介します。ぜひ読んでください。
※こちらの記事の内容は原稿作成時のものです。
最新の情報と一部異なる場合がありますのでご了承ください。
沼田絵美さん連載記事
就活の誤解が解けるおまじない
- 第1回 – 接客は向いてない。だから小売・流通業は避けています!
- 第2回 – コミュ障なんで事務職希望。っていうか他にあります?
- 第3回 – 企画の仕事がしたい! マーケもいいですね!
- 第4回 – 安定した仕事ランキング(文系学生におすすめ)を教えて!
- 第5回 – 私服OKの面接…服装は何が正解なの?
- 第6回 – 成長とやりがい!となるとスタートアップ?
- 第7回 – コロナの就活への影響は 今私が伝えられること
- 第8回 – 2021年 ウィズコロナ就活はどうなる?
- 第9回 – 就職浪人する理由は?不利になる?
- 第10回 – 「地元へ残りなさい」 と言われたらどうする?
- 第11回 – CAの夢、諦められないあなたに知ってほしいこと
- 第12回 – SDGsを就活の軸に 志望動機は? 企業の探し方とコツ
- 第13回 – あえて就職偏差値を深掘りしてみた
- 第14回 – 2022年 トラ年の就活を占う
- 第15回 – 「コロナで自己PR・ガクチカが書けない」
- 第16回 – 2023年 ウサギ年の就活を占う
- 第17回 – 将来も安定した仕事とは? ChatGPTでますます増えたこの悩み
この記事を書いたひと
キャリアコンサルタント&フリーライター。超氷河期時代の就活を経て人材広告会社の営業に。退職後は大学キャリアセンター相談員や採用支援のお手伝いなど、かれこれ20年間「就職・採用」界隈でご飯を食べている個人事業主です。