「大学時代に力を入れて取り組んだことを教えてください」
この「ガクチカ」と呼ばれる就職活動中に何度も答えることになる質問。それに対して「書くことがありません」と悩む学生さんからの相談が増えています。
「ガクチカに書くべきことがない」と思い込んでしまうと、多くの場合その次のステップ「自己PR」もスムーズに取り組めなくなってしまいがちです。
今回は「コロナで大学1年~2年生でやりたかったことを諦めるしかなかった2023卒の皆さん」に向けて、このお悩み解決のヒントになるメッセージを送りたいと思います。
「ガクチカ ネタ」「ガクチカ 何を書く」で検索したけど……
大学で配られた冊子や、リクナビやキャリタスなどのコンテンツでも、「ガクチカの例」を多数読むことができますね。
そこに書かれている「先輩の事例」にはよくあるパターンがあります。
● 部活動で公式戦レギュラーのポジションを獲得するため、練習時間外にコーチにお願いをしてフォームを確認してもらった
● 高校時代から目標にしていた留学を実現、半年で現地の語学レッスンの最上位レベルに進むことができた
● 大学祭実行委員として、メンバー200人と協同しながらプログラム進行管理を一手に引き受けた
● ゼミ大会に参加。全10チームが参加するインゼミ大会で、300人に実施した対面アンケートが評価され上位入賞を果たした
● 研究室では自分で研究課題を設定し院生の先輩たちを前にプレゼン。テーマに選ばれた
部活、サークル、学校行事、ゼミ、研究室、アルバイトなど、時間をかけて取り組んできた学生が多いであろう、という事例が紹介されています。
これらの「事例」はおよそ20数年前に初めてエントリーシートが選考に導入された当時から、これまでほとんど変わっていませんでした。強いて挙げれば、当時はほとんど実施されていなかった長期インターシップくらいでしょうか。
そして、2023年卒のみなさんへ提供される「エントリーシート例」に関しても、それはおそらく変わりません。毎年新しくコンテンツが作り直されるわけではないからです。
過去の先輩たちの例を見て、「私にはこんなに力を入れて取り組んだことなんて、ない……」と落ち込んでしまった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「私には何もない」と思っていた先輩たち
しかし「私には何もない」と思っていた先輩たちは、当然ですがコロナ禍の前にもたくさんいました。
部活やサークルなし、ゼミも履修せず、アルバイトは単発だけ、資格も取ったことがないし、英語が話せるようになったわけでもない……。
「ESよくある事例」に載っていないことはどのように「ガクチカ」にしていいかわからないという先輩たちは少なくありません。
そもそも、なぜ「よくあるネタ」からガクチカを作るのか、考えたことはありますか?
それは、面接官である大人が「共通の体験」として想像しやすいからです。
部活をしていたのなら、体力には自信があるのだろうな。
TOIEC800を越えているなら、毎日コツコツ積み重ねができそうだ。
大勢の前で発言する機会が多かっただろうから、度胸はありそう。
このように、取り組んだことから「一般的に連想できること」を面接官は勝手にイメージします。このイメージが多ければ多いほど、学生が緊張して言いたいことを上手に話せなくても、想像からフォローしてもらえる可能性が高くなるわけです。
ごくまれなケースですが、会社によっては「社長が〇〇経験をしている人が大好きで、有利になりがち」という場合もあるでしょう。それを誤解して、新入社員が「やっぱり〇〇について書いた方がいい!」と学生にアドバイスすることもあり得ます。
しかし、基本的には「自分が熱意をもって取り組み、その結果が成長に繋がったこと、仕事をイメージさせる能力を表せること」であれば何をネタにしてもいいのです。
「素直に自分がいちばん好きで、時間をかけたこと」から書いてみよう
「自分にとってはそこまで自信がないけれど、とりあえずES例に載っているからゼミのことについて書こう……」と考える必要はありません。
まずは素直な気持ちで「聞いてもらえて、褒めてもらえたらうれしいな」と思えることはありませんか?
また、強い決意をもって始めたわけではないけれど、つい毎日取り組んでしまうことはありませんか?
意識もしてなかったことでも、友達から「まだそれやっているんだ!」と驚かれたことはありませんか?
例えば、去年2023卒で同じ悩みを抱えていた先輩たちでは、こんなガクチカにしたケースがありました。
推し活について書いた先輩。
飼い犬の散歩について書いた先輩。
日々の授業について書いた先輩。
自宅の家事について書いた先輩。
趣味のブログについて書いた先輩。
はじめは、「こんな内容でもいいのでしょうか……?」と言っていた先輩たちが「最初は不安だったけれど、無理やりアルバイトの話をするよりも、面接で落ち着いてお話できて、面接官の方にも共感していただけた気がします」と言えるようになりました。
「何をネタにするか」が大事なのではありません。
コロナ禍で悔しい思いをしつつ、これまで学生生活を送ってこられたことも、私たちは知っています。
みなさんの「新しいSTORY」が聞けることを、面接官も楽しみにしていますよ!
※こちらの記事の内容は原稿作成時のものです。
最新の情報と一部異なる場合がありますのでご了承ください。
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この記事を書いたひと
キャリアコンサルタント&フリーライター。超氷河期時代の就活を経て人材広告会社の営業に。退職後は大学キャリアセンター相談員や採用支援のお手伝いなど、かれこれ20年間「就職・採用」界隈でご飯を食べている個人事業主です。