「キャリアセンターに、学生が来ない」
「学内で就活イベントを実施しても参加率が平年に比べて低い」
ここ最近、大学キャリアセンターで交わされている会話です。
私は20年以上就職支援業界に関わり、現在はフリーランスとして大学キャリアセンターで定期的に相談員を務めているキャリアコンサルタント&フリーライターです。さまざまな大学のキャリアセンター職員とも情報交換をするなかで、最近一番気になるトピックが、「2022卒学生との接触機会の減少」について。
2020年4月から、大学の多くがWeb授業に移行しました。
大学に来ていれば、生協や学食の掲示板などで告知ポスターを目にする機会もあったでしょう。通学途中で、「先週インターン行ってきた」「私はやっとES受かったとこだわ」といった会話を耳にすることもあったでしょう。
よほど「キャリア」というものに意識を向けていない限り、つまり「大学を卒業したら、普通に働いて、普通にお休みが取れて、普通に生活できるくらいのお給料がもらえたらいいなあ」と思っている大多数の学生にしてみれば、今の環境では就職意欲を行動に結びつけるきっかけが少なくなるのも当然のことです。
かといって、「何とかなるだろう」と楽観的に過ごしてもいません。
多くの学生が、「2022卒の就活は先輩たちよりも大変になるだろう」と不安を抱え、「コロナ禍でも安定して働ける会社はどこだろう」と業界や会社選びを迷っています。
この「なんとなく不安だが、具体的に何も行動していない」という時間を引き延ばさないように、今知っておきたい「withコロナ就活の3つのポイントを紹介します。
※この原稿は、2020年12月末時点で集めた情報をもとに記載した内容です。社会の変化に伴い、内容が変化する可能性があります。
ポイント①:2021卒の就職内定率は前年に近い水準まで追いついてきている
「なんで私が卒業するときに限ってこんな大変な世の中になっちゃったのよ」と愚痴の一つも言いたくなるほど世の中が大きく変化したコロナ禍。
しかし、実は「思っていたほど2021卒の先輩たちの最低就職率は悪くなっていない」ということをご存じですか?
キャリタス就活2021学生モニター調査によると、10月1日時点での内定率は88.6%。前年の2020卒は90.5%で、マイナス1.9ポイントと微減ではありますが、7月1日時点での差は6.3ポイントあり、コロナ対応のため遅れていた選考が追いつきつつあります。
また、リーマンショックと東日本大震災の影響があった2011卒76.9%と比較すると、「コロナのために、新卒採用を全面中止もしくは極端に絞った」という企業は航空や旅行といった限られた業界であることがわかります。
同じく株式会社ディスコが調査する企業調査では、2022年3月卒業予定者の採用予定について「2021年卒並み」が59.7%と約6割、「減る」9.8%、「増える」8.7%となっています。ほぼ均衡していると言っていいでしょう。
※出典:2022年卒採用計画調査 新卒採用に関する企業調査(2020年10月)
かつての「就職氷河期の再来」ではありません。
しかし、この事実を知らなければ「航空会社や旅行代理店の採用中止」「コロナ倒産」といったセンセーショナルなニュースにショックを受けてしまうのは当然です。
ポイント②:「安定」と「将来への保障」への期待を無闇に追いかけてませんか?
「今のところは、企業も採用数を減らさないと言っていても、これからもどんどんコロナが拡大してしまったらわからないから、転職や独立できるスキルや経験を身につけられる会社や、倒産しなさそうな安定した会社を探したい」
不安と同時に強くなるのが、「安定志向」と「将来の保証」への期待です。
それ自体は悪いことではありません。問題は、知識や根拠が不十分なまま「なんとなく安定していると思った」「〇〇業界はこれから伸びると聞いた」というイメージだけで判断してしまうことです。
例えば、就活生に「スキルが身に付いて、転職がしやすいのではないか」と人気上昇中のIT企業。
「研修もしっかりしていてイチから仕事を教えてもらえるし、コツコツ取り組む自分には向いているのではないか……」と考えて志望する学生さんが増えています。
しかし、ひとくちに「IT業界」といっても仕事内容は様々です。
例えば「不動産業界」。賃貸と分譲マンション販売と管理とオフィスビルの仕事は全く違う業務内容だ、ということは想像ができますね。さらに、「マンションの管理人さん」「マンションを建てる建設会社の現場監督」「マンション販売する営業」「マンションの広告を作っているデザイナー」「中古マンションの配管取り替えの技師さん」の仕事内容も全く異なることも理解できるでしょう。
これと同じように、「IT業界」も大きすぎる分類です。そのなかで働く人も「SE」「プログラマ」という職種名では判断しきれない違いがあります。
にもかかわらず、「パソコンを使って、プログラムを作る」というざっくり過ぎるイメージで「たまたま検索で出てきた希望の勤務地ときれいなオフィスと充実した教育研修制度に惹かれた会社を志望」してしまい、いわゆるミスマッチが起こることになります。
どれだけ業界研究が不十分か、想像できる資料があります。楽天みん就が実施した「IT人気企業ランキング」です。
全業界・全業種を対象とした人気企業ランキングの場合、同じ業種であれば売上規模の大きい会社が上位にランクインすることがほとんど。もちろん、銀行のようにある程度「同ランク」とみなされる業種の場合はその採用広報の工夫で入れ替わりがありますが、「デンソー」が「トヨタ自動車」を上回る人気を得ることは難しいでしょう。
企業規模や業界地位が、そのまま知名度や人気度と一致するのが「通常」のランキングです。しかし、「IT人気企業ランキング」ではこの逆転が「普通に」起こります。
例えば、日本ユニシスが28位、その子会社であるユニアデックスが20位と逆転しています。「三菱UFJ銀行」よりも、「三菱UFJインフォメーションテクノロジー」が人気ランキングで上位に来ているような状況ということです。
もちろん、企業規模が完全に「企業としての魅力」とイコールになるわけではありませんが、「IT業界ではそもそもどのようなジャンルがあり、どのような企業群があり、どのような位置づけなのか」という基本的な知識があれば、このようなランキングにはやはりならないのです。
※出典:2021年卒 IT業界新卒就職人気企業ランキング(楽天みん就)
もしも本当に、「自分の将来のために、独立できるほどの力をつけることができる仕事に就きたい」と考えるなら、業界や職種についてしっかりと知識を得たうえで、「自分の能力を発揮できる場はどこか」を選ばなければなりません。その「前提」となる知識があるかどうかがこれまで以上に大切になります。
ポイント③:オンライン就活にはメリットとデメリットの両面がある
見切り発車でスタートした2021卒のオンライン採用と異なり、2022卒は企業側もしっかりと準備したうえでオンラインでの採用活動を充実させていくことになります。
学生側のメリット・デメリット両面を知り、上手に活用してください。
オンライン就活最大のメリットは「格差の是正」
「興味があるから説明会に参加したいけれど、その段階で往復数万円の交通費をかけて上京するのはつらい」
「一次面接で不合格になると交通費が出ないから、まだまだアルバイトをしないといけない……」
地方に住んでいたり、就活のための資金を自力でねん出したりしなければならない学生にとって、オンラインでの採用活動は「就活の機会」を格段に大きくしました。これは企業にとっても同じで、「優秀な地方の学生に出会うことができた」と高く評価しています。
オンライン就活最大のデメリットは「思ってたんと違う」
「説明会も一次面接もテストもオンライン。二次面接以降は個人面接だったし、10月の内定式で初めて同期になるほかの学生に会ったけれど、正直合わないというか、なぜ自分は内定が出たのだろうと疑問しかわかない……」
言葉では説明できないけれど、「なんか思っていたのと違う」という直感は誰にでも起こることです。
オンライン就活最大のデメリットは、この「直感」が働くセンサーが対面よりも鈍るうえに、「実際に会ってみて、はじめて気が付いたこと」のほうが重要に感じるという点にあります。
特に、入社してからの「思っていたのと違う」は早期離職に直結する要因です。これまで以上に、しっかりした「仕事理解」が必要です。
まとめ:「仕事への理解を深めたい」という学生を企業は歓迎している
OB・OG訪問や店舗訪問をする学生を評価するのは、「熱意」だけではなく「仕事に対する理解が進んだうえで、その仕事ができるという自信をもって応募してくれた学生」と判断できるからです。
これまで「対面」でしてきた仕事理解を深める機会を、さまざまな手段で増やすこと。自分がたまたま興味を持ったジャンルの仕事理解だけでなく、「世の中全体」と比較してみること。
例えば、一見就職活動とは関係がなさそうな記事もたくさん掲載されている「JOB STORY」も、立場や目線を変えて「仕事」を考える良い機会を提供してくれます。ぜひたくさんの記事を読んでみて下さいね!
※こちらの記事の内容は原稿作成時のものです。
最新の情報と一部異なる場合がありますのでご了承ください。
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この記事を書いたひと
キャリアコンサルタント&フリーライター。超氷河期時代の就活を経て人材広告会社の営業に。退職後は大学キャリアセンター相談員や採用支援のお手伝いなど、かれこれ20年間「就職・採用」界隈でご飯を食べている個人事業主です。