「大学は地元に残ったけれど、就職では絶対東京に行くんだ!」
「地元には興味のある職種がない。やりたいことを優先してチャレンジしたい」
「とにかく地元から脱出したい。一人暮らしがしたい!!」
就職先を考えるうえで、重要な選択項目のひとつである「勤務地」について。
もともと「地元が好きで、地元から通える範囲に自分のやりたい仕事に就ける就職先がある」方なら問題になることは少ないのですが、この組み合わせがうまくいかないと大きな悩みのもとになってしまいがちです。
特に、最近増えているご相談がこちら。
「地元から出て就活をしたいけれど、新型コロナウイルスの心配があり、東京や大阪など感染者が多くなってしまう都心部での就活や転勤が前提の会社への就活を反対されている。親が心配する気持ちもわかるし、自分も不安は感じるだけに、どうすればよいかわからない」
「コロナが心配だから、地元へ残りなさい」という親の意見と、自分のやりたいことの板挟みに苦しむ学生さんに伝えたいことを書きました。
働き方の選択肢は増えている
多くの人の健康や生活に悪い影響を及ぼす新型コロナウイルスですが、新型コロナウイルスに対抗するために「良い意味で」与えた影響も少なくありません。
その一つが、「働き方改革のスピードが早まったこと」です。
「働き方改革」の一環として、リモートワークが推奨されるようになったのは新型コロナウイルス流行よりも数年前のことですが、実際にリモートワークを取り入れている企業はごくわずかでした。
しかし、二度の緊急事態宣言を経て、導入企業が一気に増えます。もともとリモートワークと親和性の高い業界・職種では、「4月からずっとリモートワークのまま。今後もその予定のため、本社を縮小移転する計画中」という会社も珍しくありません。
もちろんリモートワーク導入による弊害もゼロではないため、企業ごとに「アフターコロナ」にリモートワークがどのように定着するかは異なるでしょう。しかし、「リモートワークできる仕事」がこれからもある程度残ることだけは間違いありません。ビデオ会議システムを使った選考も一般的になりました。
現住所と転職を希望する会社の所在地が新幹線や飛行機の距離で、面接を受けること自体が困難という心配がなくなるだけでも、大きなチャンスです。
地元で「やりたいこと」を探す方法
「“やりたいこと”が地元の企業にあれば、地元で仕事ができるのがいちばんいいのに……」
コロナに関係なく、昔から地方在住学生のみなさんを悩ませ続けているパターンでお悩みの方もいらっしゃるかもしれません。
このパターンの方は、ぜひ就活の仕方を「就職ナビサイト」「合同企業説明会」ではない方法に変えてみてください。
地方であればあるほど、就職ナビサイトや合同企業説明会で採用活動をする会社は少なくなります。地方の場合、ある程度の人数を、毎年継続的に採用する会社にしか就職ナビサイトや合同企業説明会の営業はやってきません。
採用を集めるのが難しくない人気職種で、なおかつ毎年新卒採用をするわけではない……という会社の場合、自社のHPや地元のハローワーク、一部の大学への求人票や紹介だけで採用するケースの方が圧倒的に多いのです。また、転職者向けの求人情報の中に「新卒可・未経験可」を見つけることもできます。
就職ナビサイト上で「勤務地×希望職種=0件」という結果になる方は、ぜひ違うチャネルを活用してください。
「親の気持ち」に折り合いをつける方法
「それでもやっぱり、私は東京のあの会社のオフィスで働きたい」
「なんとか親を説得したいけれど、どうすればよいか悩む」
できることなら、自分の選択を応援してほしい。でも、「今東京で働くことになったら、帰省すらできなくなるかもしれない。万が一感染して重症化したら、どうするの?」と言われたら強く言い返せない……。
そんな板挟みで悩んでいる方のご相談を受けたときにお伝えしていることを最後に紹介します。
「あなたのために」「子供の幸せを願って」地元に残るようにと多くの親は口にします。
本心から、離れて暮らす子を心配する親がほとんどでしょう。そのような振る舞いを「不要だ」と突っぱねるのは難しいことですし、「本当は自分たちに都合がいいからだ」と考え対立するのも子ども本人にとって得策とは言えません。
それでもなお、言われた通りに諦めてほかの道を選んだ結果、「あの時やっぱりチャレンジすればよかった」と後悔することになる未来も予想できてしまいます。
「親の心配や意見を尊重しているような振る舞いを見せつつ、結果として自分の希望通りの未来をつかむ」というやり方を模索してみてはいかがでしょうか。
「希望勤務地を地元にして応募すると親には伝えつつ、本社が違う会社に応募する」
「地元の企業も並行して受けつつ、希望の会社も受ける。最終的に内定が出てから意思を通す」
「大学の教授や親せきなど、客観的な視点で応援してくれる大人を見つけて協力してもらう」
「入社予定の会社の良さを全力でアピールする(入社希望、ではなく内定してから説得する)」
いろいろな方法で、「最初は反対されていたけれど、最後は自分の意思を通した」先輩たちに共通しているのは、「まず説得するための結果を出した」ということです。
少なくとも、「チャレンジする前に諦めた」という後悔をしなくて済みます。
(筆者も過去、「お父さんお母さんが心配するのは当然だし、その気持ちはうれしい。地元配属の『可能性』がある企業を中心に受けるね!」と言って配属希望はコッソリ違うところを出した経験者です。)
あなたが決めた選択肢に「間違い」はない
誰かの意見に左右されてもされなくても、最終的にそれを選んだのは「私」だという気持ちさえあれば、あなたの選択した結果に「間違い」はありません。
どちらを選んでも、もう一つの選択肢をまた選びなおすこともできますし,「こっちを選んでよかった」と思える未来を創ることもできるからです。
メリットデメリットを判断するための材料を集め、客観的・論理的に説明し、相手に納得してもらうという一連の過程自体が、これから始まる仕事に必要な能力を鍛える絶好の機会でもあります。
迷ったときは大学など学校のキャリアセンターにも相談してみましょう。過去、同じように悩んだ先輩たちがどのように活動したか、ヒントを得ることができるかもしれません!
※こちらの記事の内容は原稿作成時のものです。
最新の情報と一部異なる場合がありますのでご了承ください。
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この記事を書いたひと
キャリアコンサルタント&フリーライター。超氷河期時代の就活を経て人材広告会社の営業に。退職後は大学キャリアセンター相談員や採用支援のお手伝いなど、かれこれ20年間「就職・採用」界隈でご飯を食べている個人事業主です。