フードロス(食品ロス)とは、食べられないまま廃棄となる食品のことを言います。フードロスは大きく次の2つに分けられます。

  • 事業系フードロス:スーパーの売れ残り品や規格外野菜など、事業活動の課程で廃棄される食品
  • 家庭系フードロス:食べ残しや買いすぎなどの理由により、私たちの家庭で廃棄される食品

「本当は食べられるのに捨てるなんてもったいない!」と感じますよね。しかも、フードロスは環境へも悪影響を及ぼします。

捨てられた食品は生ゴミとして焼却され、温室効果ガス(CO2)を排出します。また食品の製造や輸送でもCO2が発生しているため、食品が食べられずに捨てられれば、その分だけムダにCO2を排出したことにほかなりません

地球温暖化が進むなかで、フードロスは世界が向き合うべき重要課題の1つなのです。

日本のフードロスの現状

2019年の日本のフードロス発生量は推定で570万トン、国民1人あたりに直すと1年で約45kgのロスが発生しています。これは、全国民が小ぶりのお茶碗1杯分のごはんを毎日捨てているのに近い量です。

※環境省:令和元年の推定値

また発生量の内訳を見ると、事業系が309万トン、家庭系が261万トン。じつは日本のフードロス発生量の半分近くが、私たちの家庭からでているのです。

その一方で、次のようなデータもあります。

“日々大量の食料を輸入しながら、貧困に苦しむ子どもには分け与えずに捨てている”というのが日本のフードロスの現状といえるでしょう。

この不均衡な構図は国内だけではありません。世界中の食料が先進国に集中し、食料が行き渡らない地域で飢餓を引き起こしています。SDGsの目標2である「飢餓をゼロに」の達成のためにも、私たち日本人にはフードロスの問題と向き合う責任があるのです。

世界のフードロスの現状

世界で発生しているフードロスの量は年間13億トン。生産された食料の約1/3が、食べられないまま捨てられています。

地域別:1人当たりのフードロスの発生量

日本と主要国の年間のフードロス量を比較してみましょう。

地域食品廃棄量
(万トン)
フードロス
(万トン)
1人当たりの食品廃棄量
(kg)
1人当たりのフードロス量
(kg)
日本1,700640133.650
アメリカ5,640177.5
中国10,30075.74
イギリス1,200900187140
フランス999〜1,327469〜602148.7〜200.569.8〜90.8
ドイツ1,097136
オランダ252〜373135〜199149.9〜222.980.2〜119.2
韓国590114

※出典:(公財)流通経済研究所「海外における食品廃棄物等の発生状況及び再生利用等実施状況調査

表の食品廃棄量とは、食べられる部分と、骨や皮のように元から食べられない部分を合わせた値です。

表からわかる通り、日本の食品廃棄量は中国、アメリカに続いて3位。1人当たりに直しても日本はアジアでワースト1位と、不名誉な順位となっています。

先進国と発展途上国ではフードロスの原因が違う

アフリカや東南アジア、ラテンアメリカなどの途上国でもフードロスは先進国に近い量を出しています。

しかし、途上国と先進国とはフードロスの原因が異なります。

  • 先進国:食品を余らせて廃棄
  • 途上国:保存の不備や輸送手段の遅れで出荷できずに廃棄

先進国のフードロスが消費段階で発生するのに対して、途上国ではおもに流通段階でロスが発生しています。その背景には、市場へのアクセス手段が乏しかったり、貯蔵設備を持つお金がなかったりといった貧しさがあります。

先進国は、自分たちのフードロスの削減に取り組むと同時に、途上国に対して設備支援するなどの対策が必要です。

フードロス対策に関する法律について

日本は、国内のフードロス対策として2つの法律を制定しています。

  • 食品ロス削減推進法
  • 食品リサイクル法

食品ロス削減推進法について

正式名は「食品ロスの削減と推進に関する法律」といい、2019年10月に施行されました。この法律では、食品ロス(フードロス)の定義、国の基本方針、国や地方自治体・事業者の責務、消費者の役割、フードロス削減に関する基本的施策などが盛り込まれています。

なかには、フードロスの削減に功績がある人を表彰するといったものも。毎年10月を「食品ロス削減月間」と定めたのもこの法律ですね。

気になる消費者の役割ですが、要約すると「フードロス削減の重要性を理解し、フードロスを発生させないような買い物・調理方法への改善に主体的に取り組みましょう」といった内容です。とくに罰則はないものの、国民一人ひとりがフードロスを他人事と考えず、関心をもって削減に協力することが求められています。

食品リサイクル法について

食品リサイクル法は、食品関連事業者(食品メーカーやスーパーなど)に対してフードロス削減の推進を求める法律です。正式には「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律」といい、2001年5月に施行され、2007年12月に改正されました。食品循環資源とは、飼料や肥料などに活用できる食品廃棄物のことです。

食品リサイクル法では、2つの基本方針を定めています。

  • フードロスそのものの抑制と、脱水や乾燥などによる最終処分量の減少
  • 飼料や肥料へのリサイクルと、処分の過程で発生したエネルギーの活用

また食品リサイクル法では、業種ごとに再生利用等実施率(リサイクル率)の目標値を設定しています。

とはいえ、ひとくちに食品廃棄といっても、すべてが飼料や肥料に加工しやすい状態で廃棄されるわけではありません。とくにスーパーのような小売業や外食産業から出る食品廃棄は不衛生なものが多く、焼却や埋立処分となる割合が高めです。

食品リサイクル法の対象は事業者ですが、消費者としても「外食では食べ切れる量だけオーダーする」「買い物では、商品の見栄えや外観で過度により好みするのを控える」といった意識を持ちたいですね。

SDGsとフードロスの関係

SDGs(持続可能な開発目標)でも、目標12「つくる責任 使う責任」のなかのターゲット12.3にフードロスの削減が盛り込まれています。

  • 2030年までに世界の食料廃棄量を半減させる
  • 生産・サプライチェーンでのフードロスを減少させる

フードロスに代表される大量消費は、自然を壊して農地を拡大したり、魚を乱獲したりといった大量生産によって成り立ちます。これは未来へ残すべき地球の資源を、今の人たちが先取りして使っていることにほかなりません。

とくに日本は食料の多くを輸入に依存している国。食品の製造や輸送、廃棄後の処理に多くの資源が使われていることを理解して、フードロス削減に取り組むべきといえます。

またフードロスは他の目標とも無関係ではありません。

例えばSDGs目標2「飢餓をゼロに」です。今、世界人口の11人に1人が飢餓に苦しんでると言われます。一方で、日本が毎年捨てている食品の量は、世界が途上国に援助している量の約1.4倍。もし私たちがムダにしている食料資源がきちんと途上国へ分配できれば、栄養不足で命を落とす人たちを救えます。

また飢餓の原因の1つは自然災害です。フードロスの削減で環境への悪影響を抑制できれば、自然災害によって飢餓に陥る人びとを減らすことにもつながります。

フードロスはなぜ起こってしまうのか

日本のフードロスの約半分は私たちの家庭から発生しています。調査によると、もっとも多い理由が「食べ残し」。次いで、買ったまま使わずに腐らせてしまう「傷んでいた」や「期限切れ」が続きます。

  • 「食べ残し」57%
  • 「傷んでいた」23%
  • 「賞味期限・消費期限切れ」11%

※出典:消費者庁「平成29年度徳島県における食品ロス削減に関する実証事業の結果の概要

具体的なフードロスの例をみてみましょう。

好き嫌いや作りすぎによる食べ残し

「子どもが食べてくれなかった」「別の日に食べようと思って忘れていた」なんて経験はないでしょうか? 子どもは体調や気分で食べる量が増えたり減ったりするため、とくに小さなお子さんがいる家庭では食べ残しが多くなりがちです。

また、お土産や贈り物でもらったものが口に合わなかったり、水筒のお茶を飲みきれなかったりで捨てた場合もフードロスに入ります。とりわけ飲み物はムダにしていると意識しにくいため、ついやってしまいがちなフードロスといえるでしょう。

安売りなどで必要以上に買いすぎる

大量購入前提の大型スーパーに行くと、つい買いすぎてしまうものです。余ったら冷凍庫で保存しようと思っても「すでに入るスペースがなかった……」なんてことも少なくありません。

また、買って帰ってから、じつはまだストックがあったことに気づく場合も多いですよね。使いきれずに腐らせてしまえば、そのままフードロスとなってしまいます。

買い物前に今ある食品をチェックする癖をつけ、もし買いすぎてしまった場合はフードバンクへの寄付も検討しましょう。

賞味期限にこだわりすぎる

日本のフードロスの原因の1つに、賞味期限切れへの過剰なこだわりがあげられます。

「賞味期限を過ぎたら捨てなきゃいけない」と考えがちですが、賞味期限はパックされた状態で正しく保管すれば美味しく食べられる期限であり、消費期限ではありません。しかも、賞味期限は各企業が「美味しく食べられる」と試算した時期よりも、さらに前倒しで設定されています。

賞味期限の意味を正しく理解し、食べられるかどうかは自分で判断する意識が大切です。

食べられる部分まで捨ててしまう

野菜の皮を厚めにむいたり、肉の脂身をすべて取り除いたりといった過剰除去もフードロスの原因の1つです。

また意外に多いのが、食べられる部分まで知らずに捨てている場合です。例えば、ニンジンの皮やブロッコリーの茎などは食べられる部分。

習慣で捨ててしまう前に「じつは食べられるかも」と見直してみましょう。

レストランで頼みすぎてしまう

外食での食べ残しは家庭のフードロスではありませんが、私たち消費者の行動によって発生してしまうロスの1つです。

「ビュッフェでたくさん取ったけれど、結局残してしまった」「飲み会で最後に頼んだお酒が飲みきれなかった」など、ついやってしまいますよね。しかし、ちりも積もれば山となるで、みんなが同じことをすれば、その飲食店から出るフードロスは膨大な量になってしまいます。

完食できる分だけ頼みましょう。

個人でできるフードロス対策

私たちが少し意識を変えるだけで、フードロスは大きく削減できます。

  • 食べ切れる量だけ買う
  • 過剰除去を減らす
  • 賞味期限をゆったり捉える

上記のように家庭内でできる対策のほか、フードロス削減に取組む団体・サービスを積極的に利用する方法もあります。

フードドライブに参加する

フードドライブとは、家庭で食べられないまま保管されている未開封品を持ち寄り、フードバンクに寄付する活動です。フードドライブで集まった食品は、フードバンクを通じて福祉施設や生活に困っている方たちへ無償で届けられます。

お米、乾麺、缶詰、粉ミルクや離乳食など保存性のある食品はとくに喜ばれます。フードドライブは多くの自治体で実施されていますので、ぜひお住まいの自治体のHPを確認してみてください!

フードロス対策アプリを活用する

レストランやカフェ、小売店のフードロスになりそうな食品を、お手頃価格で消費者が購入できるフードシェアリングサービスが続々と登場しています。

※以下の表の数値などは原稿執筆のものです。最新の情報はHPなどをご参照ください。

フードロス対策アプリ① 『最後まで食べ切る』を応援する『TABETE』

※画像引用:https://tabete.me/

会員登録必要(無料)
サービス利用料無料
対応エリア全国
※首都圏(東京23区付近)、金沢市、大阪市、福岡市、名古屋市など各都市圏を中心
支払い方法クレジットカード
運営会社株式会社コークッキング

TABETEは、フードロスが発生しそうなお店と、お得な食品を探しているユーザーをつなぐプラットフォームサービスです。多くの自治体と連携し、加盟店数も2000店舗を達成したフードロス対策アプリのパイオニアです。

【使い方】
①ロスが発生しそうになったお店が、その内容をTABETEに掲載する
②TABETEで情報をみたユーザーが購入・アプリ上で決済
③ユーザーがお店へ行って商品を受け取る

フードロス対策アプリ② レストランをガチャ予約する『Tabetta』

※画像引用:https://tabetta.jp/

会員登録必要(無料)
サービス利用料無料
対応エリア渋谷駅周辺
(エリア拡大の調整中)
支払い方法お店による
運営会社株式会社タベッタ

Tabettaは、フードロスが出そうな飲食店とユーザーをマッチングするサービス。定価から30%以上お得に食事でき、またどのお店とコースが予約されるかわからない”ガチャ”要素が面白いと話題です。

【使い方】
①お店を予約したいユーザーが、希望日時(当日〜2日先まで選択可)や予算、エリア、ジャンルを入力する
②希望にあったお店をTabettaが予約して、ユーザーへ通知
③ユーザーがお店へ行って食事をする

フードロス対策アプリ③ フードロス商品をお得に買える『No Food Loss』

※画像引用:https://fuubo-nofoodloss.com/

会員登録必要(無料)
サービス利用料無料
対応エリア関東を中心に全国展開
支払い方法お店による
運営会社みなとく株式会社

No Food Lossはフードロスになりそうな商品を購入できるクーポンを発行するアプリ。

加盟店は150店舗とまだ少ないものの、パンやお弁当などが50%近くお得に購入できるのが魅力。さらに代金の一部は飢えに苦しむ世界の子どもたちの給食支援に寄付されます。

【使い方】
①ユーザーが利用したいクーポンを探す
②ユーザーがお店でクーポンを見せ、クーポンを認証
③クーポン確定後に商品を購入する

フードロス対策通販サイトを利用する

フードロスになりそうな商品を抱えた生産者とユーザーをつなぐ、フードロス対策通販サイトも人気です。

※以下の表の数値などは原稿執筆のものです。最新の情報はHPなどをご参照ください。

フードロス対策通販サイト① 日本最大級の社会貢献型通販サイト『KURADASHI』

※画像引用:https://kuradashi.jp/

会員登録必要
商品の種類食品コスメ・健康食品日用品その他
配送エリア全国(一部地域・離島を除く)
配送料1注文ごとに550円(沖縄・離島、クール便などは別途)送料無料商品あり(一部地域を除く)
支払い方法クレジットカード代引
運営会社株式会社クラダシ

最大97%OFFもある日本最大級のフードロス対策通販サイトです。メルマガ、LINE登録などで各種クーポンが配布されるほか、月額550円(税込)のプレミアム会員になるといつでも送料無料。

また購入代金の一部は、海外や環境保護団体などの支援に使われます。

フードロス対策通販サイト② さまざまな訳あり商品がそろう『Otameshi』

※画像引用:https://www.otame4.jp/

会員登録不要
商品の種類食品コスメ・健康食品日用品ペット用品
配送エリア全国(沖縄・離島を除く)
配送料一律770円3,980円以上購入で送料無料送料無料商品あり
支払い方法後払いクレジットカードPayPayAmazon PayLINE Payポイント支払
運営会社株式会社ネットプライス

Otameshiは、賞味期限近い・旧パッケージなどの理由で処分される商品をお得に購入できる通販サイト。食品以外にもさまざまな訳あり商品がそろっています。

さらに購入費用の一部を任意の団体に寄付できるため、フードロス以外にも主体的に社会貢献できます。

フードロス対策通販サイト③ ロス商品のサブスクも楽しめる『ロスゼロ』

※画像引用:https://www.losszero.jp/

会員登録不要
商品の種類食品
配送エリア全国
配送料商品による
10,000円以上購入で送料無料
送料無料商品あり(沖縄・離島は別途)
支払い方法クレジットカード
運営会社株式会社ロスゼロ

全国の規格外品や余剰になってしまったフードロス予備軍の食品をお得に購入できる通販サイト。ロスゼロには2カ月に1回ロス食品の詰め合わせが届くサービスがあり、福袋感覚で楽しめると人気です。

なお売上の一部は発展途上国支援などに寄付されます。

フードロス対策通販サイト④ 決済した商品はイートインも可能『GURU+』

※画像引用:https://gurutas.jp/

会員登録必要
商品の種類食品
対応エリア大阪市中心
配送料なし(店頭受け取り)
支払い方法paypal
運営会社株式会社A&A LinkTh

飲食店や食料品店でフードロスになりそうな商品を、WEBサイトを通じてユーザーがオンライン決済し、店頭で受け取るサービスです。商品はテイクアウトのほか、店舗によってはイートインも可能。

通販とは少し異なりますが、身近なお店のフードロス削減と売上に貢献できるサービスです。

まとめ

フードロスは世界が向き合うべき重要課題の1つです。身近にできる取り組みもたくさんありますので、まずは個人でできることから実践してみてはいかがでしょうか。

※こちらの記事の内容は原稿作成時のものです。
最新の情報と一部異なる場合がありますのでご了承ください。


この記事を書いたひと