はじめに

ふらっと街に出かけたときに、書店を見かけたら、何か面白い本はないかなと立ち寄ることがあるでしょう。自分の知識を深められるような書籍、仕事に役立つような書籍を買いたいと覗くこともあると思います。

「いい本」と出会うための方法を連載します!



しかしいざ店内を回ったものの、本がたくさんあり過ぎて、結局何を買ったらいいのかよくわからなくなってしまった……そのような経験をする人は多いのではないでしょうか。

ファッションや健康、食事のマナーと違って、「こうしたらいいよ!」と端的に教えてくれる情報はあまりないかもしれません。

そこで本連載では、筆者の7年間の書店勤務経験を元に、「いい本」と出会うための方法を、書店の巡り方という観点からご紹介します。本連載は次のような構成となっています。

  • 第一回:「いい本」を見つけるための書店の巡り方・基本編
  • 第二回:「いい本」を見つけるための各書棚の見方・応用編
  • 第三回:「いい本」の選び方と見つけたときに得られる変化

ここでお伝えする「いい本」とは、思わず心が踊るような面白い書籍や自分の役に立ちそうな書籍のことです。第一回の本記事では、それが見つけやすくなる書店の巡り方をご紹介します。

いろんな話題を知ってコミュニケーション能力を上げたい、仕事の効率を高めたいなど、自分を磨きたいときの参考としていただければ幸いです。

※なお、ここでいう書店とは、いわゆる新刊を売ることを目的としている書店を指しています。

書店では何をどのように見たら良いのか

書店では何をどのように見たら良いのか


「いい本(面白い書籍や自分の役に立ちそうな書籍)」を見つけたい、と考えて書店を訪れたのなら、書店員が推す書籍はどこに置かれやすいか知るのがおすすめです。書店員は日夜書籍に触れ、どんな書籍が人の心に刺さるのか熟知しているからです。具体的に、次の方法を試してみてください。

1.面陳を見る

2.書棚以外の場所を見る

3.手書きPOPが付いているか見る

こちらの方法は、大型書店や駅ナカの小さな書店、街の本屋さんなど、さまざまなタイプの書店におおよそ当てはまります。以下で、詳しく解説しましょう。

1.面陳を見る

面陳(めんちん)とは、書籍の表紙(面)を見せて書棚に陳列する方法です。書店に入ったら、まずはどんな書籍が面陳されているのか見てみてください。そこには書店員イチオシ、あるいは本当に多くの人の心を掴んでいる書籍が並んでいる可能性があります。

書店に行くとたくさんの書籍が並んでいるので、何となくでも、いろんな書籍が常に出版されている印象はあると思います。では具体的に、新刊書籍というのは毎年どのくらいの出ているのかご存知でしょうか。総務省統計局の「書籍の出版点数と平均定価」によれば、平成27年は約80,000点、28年は約78,000点、29年は75,000点です(いずれも雑誌は除きます)。わかりやすく言えば、毎日200タイトル以上、新しい書籍が作られている計算です。

もちろん書店の規模などの関係で、各書店に入荷する新刊書籍の点数には、ばらつきはあります。しかしいずれの書店でも、たとえば人気作家が書いた書籍や話題性のある書籍などは十冊、二十冊、百冊と束で入荷することは珍しくなく、やはりかなりの数の新刊書籍が日々入ってきているのは確かでしょう。

当然、売場面積には限りがあるので、すべての書籍を面陳にすることはできません。となれば何が起こるかと言うと、書店員による「面白そうか、そうではないか」「来店するお客さんのニーズに合った書籍なのか、どうか」の判別です。これによってある書籍は面陳になりますが、ある書籍は新刊書籍と言えども棚差し(詳細後述)となることもあります。

つまり面陳されている書籍は、書店員の厳しい審査をかいくぐったエリート書籍なのです。これこそが、書店に入ったらまず面陳を見ていただきたい理由です。

ちなみに、ジャンルにもよるのですが、そうしたエリート書籍もだいたい発売から1ヶ月すると、面陳をやめる候補になります。多くの書籍は、基本的に発売後1ヶ月間が最も購入されやすい期間だからです。

逆に言えば、1ヶ月以上経過しているのに面陳されている場合は、エリート書籍の中でも、さらにイチオシ度の高い書籍であると見ていいでしょう。たとえば『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社・2013年12月刊)や『漫画 君たちはどう生きるか』(マガジンハウス・2017年8月刊)などは、今でも面陳している書店は少なくなく、かなりのエリートと言えます。

面陳の数だけおすすめ度が高い

面陳の数だけおすすめ度が高い

面陳の話をしましたので、面陳の数についてもお話しましょう。書店ではよく、同じ書籍が横に並べて面陳されることがあります。考えてみると不思議なもので、洋服屋で言うなら同じ服装をしたマネキンが複数体並んでいるようなものです。これは、書店特有のディスプレイかもしれません。

さて、この場合ですが、並びの数だけおすすめ度合いが高い、あるいは世間の注目度が高い書籍と言うことができます。他の書籍が置けるスペースを潰してでも、多面で並べる価値があると書店員に判断されているからです。面陳をチェックするときは、面陳数が他の書籍と比べて、どの程度優遇されているのかも気にしてみてください。

面陳と同じくらい重要な平積み

面陳と同じ仲間に、平積みという陳列方法があります。これは、書棚の前にある平台に積む方法です。面陳同様、書籍の表を見せる並べ方であり、やはり書店員が面白いと思った書籍が並んでいる可能性があるので目を通してみるといいでしょう。平積みする期間も1ヶ月を基準に、別の書籍と入れ替えるか、まだ残しておくかという判断が下されることが多いです。

棚差しについて

棚差しは、本棚のように陳列する方法を言います。棚差ししている棚は、書店としてあったほうがいい書籍(村上春樹氏や『ONE PIECE』の既刊本など)を置く場所、というのが一般的な見方です。

ただ必ずしもすべての既刊本を置いているわけではなく、今も多くの方が購入している書籍を、書店員が厳選して並べていることが大半です。特に2冊以上並んでいるタイトルは、売り逃しを防ごうとしている=コンスタントにお客さんに購入されている書籍と見ることもできます。あえてダブりはないか探してみるのもひとつです。

2.書棚以外の場所を見る

書棚以外の場所を見る

面陳や平積みに注目するのは、書棚で「面白い」もしくは「自分にとって役に立つ」書籍を探す方法です。それ以外に、レジ前やワゴンなど書棚以外の場所も、同様に新たな発見に遭遇しやすい場所です。

レジ前

レジ前に置かれている書籍は、特に鉄板本であることが多いでしょう。というのも、コンビニやスーパーと違って、書籍の場合は少し読んでから購入するか決めることがほとんどです。しかし、レジスタッフが近くにいる中で、じっくりと吟味できる人はなかなかいません。

書店側も当然わかっていて、それでもあえて置いています。それだけ、ぱっと手にとって買ったとしても確実に面白かったと思える書籍、と書店員が見ている可能性が高いからです。

ワゴン

ワゴンに入っている書籍も、もし見つけたらチェックしていただきたい場所です

ワゴンに入っている書籍も、もし見つけたらチェックしていただきたい場所です。面陳や平積みだと埋もれてしまう、だけど隠れた名作だからぜひ読んでもらいたいという、書店員の強い思いが込められた書籍が置かれやすいからです。

またこのワゴンは、書店側が設置するものですが、ときおり出版社が「うちのイチオシ本を置いてほしい!」と書店員に提案することがあります。店舗に入ってすぐのところやレジまでの通り道など、人の目につきやすいところに設置するのが一般的で、面陳やPOP(詳細後述)以上に強い広告効果があるためです。ワゴンの書籍は、そんな各出版社のイチオシ本の中から、「これは面白い!」と思って書店員が選び抜いたものの可能性もあります。

またその関係で、今は注目されていなくても、今後ブームになるかもしれない書籍が並ぶこともしばしばあります。「みんなが読んでいる本はちょっと…」、そう考えている人は積極的にワゴンを探してみてもいいでしょう。

3.手書きPOPが付いているか見る

手書きPOPが付いているか見る

POPとは、商品の説明文や値段などが書かれた広告ツールです。書棚を見ると、書籍のタイトルやキャッチコピーなどが書かれたポストカードサイズの紙がよく設置されていますよね。

この中で、手書きPOP(手作りされているPOP)が付いた書籍は、チェックしていただいて損はないでしょう。理由は言わずもがなですが、手間暇がかかっているからです。

そもそも書店員は、POP1枚作るのも大変です。山程新刊が入荷するのに加えて、売り場整頓、入荷した書籍の品出し、企画立案、売れている書籍と売れていない書籍のチェック、出版社への追加注文、営業の方の対応、返品の荷造り、それに加えてレジ業務やお客さんからのお問い合わせ対応があります。

手書きPOPは、その合間を縫って作成しないといけないのですから、余程書店員にその書籍をおすすめしたい気持ちが強くないとできません。それは裏を返せば、読み手の心に突き刺さるような1冊の可能性が十分あるということです。

印刷されたPOP

手書きPOPとは別に、明らかに業者が作ったとわかるカラー印刷のPOPがあります。手書きよりは書店員のおすすめ度合いが低いかもしれませんが、こちらが付いた書籍も目を通してみるといいでしょう。この書籍にはPOPを付けたい=面白い、と書店員が判断していることもあるからです。

〇〇万部突破

POPや書籍の帯に、「○○万部突破!」という文言が書かれていることがあります。これは簡単に言えば、どれくらい多くの人の共感を呼んでいるのかを示すバロメーターです。何でもいいからとにかく話題の本が読みたい場合は、参考にするといいでしょう。ジャンルにもよりますが、10万部を超えるとベストセラーと呼ばれることが一般的となっています。

まとめ

書店に来てよかったと思えるきっかけに

今回ご紹介した巡り方を参考に、書棚にあるタイトルをぜひ眺めてみてください。何となく気になるタイトルがある、そう感じるだけでも大きな収穫です。この記事が、書店に来てよかったと思えるきっかけになることを願っています。


※こちらの記事の内容は原稿作成時のものです。
最新の情報と一部異なる場合がありますのでご了承ください。


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