「コンプライアンスってよく聞くけど、実はよく意味を知らない……」そんな方のために、コンプライアンスについて一から解説します。若手社員のあなたも、これから就職活動をするあなたも、一緒に見ていきましょう。
コンプライアンス、意味や使い方の例はこんな感じ
SNSの炎上トラブルなんかがあると、「コンプライアンス上の問題が〜」と、言われたりもするね。
“コンプラ”と略す人もいるし。
でもさ、色々調べて見るんだけど、イマイチコンプライアンスの意味がわからないんだよね……。
一体全体、「コンプライアンス」ってなんなの??
このコンプライアンス compliance という英語は、日本語に訳すと、「法令遵守」という意味になるよ。
ビジネスコンプライアンスなら、ビジネスにおける法令遵守という意味だね。
できれば使いこなせるようになりたいんだけど、どんなふうに使うのが正しいのかな?
●「コンプライアンス」の使い方例
【例①】
コンプライアンスの関係上、質問にはお答えすることができません
→法律や社内規則、社会通念の関係上、ご質問にお答えすることができません
【例②】
その企画、コンプライアンス的にアウトな企画だと思うよ
→その企画は、社会的なモラルやマナーに反する企画だと思うよ
【例③】
社員数名の小さな会社ですが、徹底したコンプライアンス教育に力を入れています
→社員数名の小さな会社ですが、徹底して法律や社内規則、社会的モラルを守るよう、人材教育に力を入れています
コンプライアンスって、必ずしも“法律”ってわけじゃなくて、社会通念上のモラルやマナーを意味することもあるんだね。
社会的な信用って、マナー違反でも失うことがあるからね。
この辺は、コンプライアンスを使うようになった背景から迫ってみるとわかりやすいかもしれないよ。
コンプラはなぜ重要に? 簡単POINT①:“社会の目”の厳しさが原因
例えば、粉飾決算や横領、リコールなど、不祥事を起こした企業に対して社会はとても厳しい目を向けるよね。
きっと毎日のようにニュースにもなる!
もし、不祥事を起こして売上が下がったりしたら、それは企業にとってはとても大きな損失だ。
そんな損失を生まないように、企業は不祥事を起こさないように取り組むようになる。これが1つ目の理由だ。
会社にも損失が生まれないということなんだね。
コンプラはなぜ重要に? 簡単POINT②:自由競争激化による影響
かつて、日本ではそれぞれ国営で運営されていたんだ。
かなり昔のことになるけど、この3つの公社は1980年代に入ると民営化された。
電電公社はNTT、専売公社はJT、国鉄はJRへと生まれ変わったんだよね。
それまではある程度の規制があって自由競争が難しかったんだけど、一気に競争が激化したんだよね。
自由競争が進むと、どんな状況になるかわかるかな?
中にはずるいことをしたり、倫理的にアウトなやり方をする企業もあったりしたのかな……。
例えば、飲料メーカーが100円で飲み物を売る。他の企業も100円で売っているから、値段を上げることはできない。そんな状況で売上をアップさせるには、原価が安くなればなるほど企業は儲かるよね。
すると、例えば下請けに無理を言って恐喝まがいのことをしたり、賄賂や談合をもちかけたり、原材料を偽ったり、法律や社会規範、倫理的にアウトなことをする企業が増えてしまう。
それを避けるためにも、コンプライアンスの考えが浸透していったんだ。
まぁ、実際は、コンプライアンスという言葉は2000年代に入ってから使われるようになったんだけどね。
コンプラはなぜ重要に? 簡単POINT③:法改正による影響
それは、2000年12月、閣議決定によって、コンプライアンス体制の確率を求めた関連法案の改正が行われたことが大きいと思う。
特に2006年5月の会社法改正によって、「資本金5億円以上」または「負債総額200億円以上」の企業に対して、適正業務の遂行や確保をするための体制を構築するように義務を定めたことが大きいね。
国が適正な業務をするように義務付けまでするようになったんだね!
2006年4月には、公益通報者保護法が施工された。これは、内部告発などを理由に解雇をしたり、内部告発した人に対して不利益を被らせたりしないように定められたものだ。
こうなると、今までは内部告発をして不利益を被るのでは?と、不安だった人も、堂々と告発できるようになる。
だから「コンプライアンス教育をしておかないと」というわけだ。
社員の誰かが犯した不正を、社員の誰かが告発して、企業名が世間にさらされるようになり、企業の信頼が失墜して、最悪の場合倒産などに追い込まれるということにもなりかねないからね。
実際にあったコンプライアンス違反事例
実際にあったコンプライアンス違反には、以下のようなものがあるよ。
● 実際にあったコンプライアンス違反の事例
【過労死自殺の問題】
某不動産会社社員の自殺が労災認定された問題。当時同社は裁量労働制を適用しており、それが法律に抵触するものだった。裁量労働制が長時間労働につながったことから労災認定に。マスコミ報道、国会で提議されるなど、話題になった
【粉飾決算など、不正会計事件】
某振り袖販売・レンタル業者の不正会計による突然の店舗閉鎖によって、成人式当日に振り袖を着られない新成人が続出した事件。その背景にはずさんな経理体制があり、粉飾決算があった。銀行からの融資もだまし取ったとされ、社会的影響が大きかったことから同社社長が融資搾取容疑でも逮捕され、実刑判決にまで至った事件
【情報漏えい問題】
某バーコード決済サービスにて、不正アクセスによる不正利用被害が発生。被害額は5000万円を越え、サービス開始数日でサービスを停止する事態に至った。セキュリティに重大な欠陥があったことから、最終的にはサービス終了にまで至った情報漏えい事件
某不動産会社社員の自殺が労災認定された問題。当時同社は裁量労働制を適用しており、それが法律に抵触するものだった。裁量労働制が長時間労働につながったことから労災認定に。マスコミ報道、国会で提議されるなど、話題になった
【景品表示法違反】
某自動車会社が、検査データを改ざんして実際の燃費よりも水増しした問題。カタログには、実際の燃費よりも5〜10%水増しされた数値が記載された。最終的には生産中止に追い込まれ、景品表示法違反として5億円近い課徴金を命じられる
【食中毒事件】
某焼肉店で提供されたユッケを食べた客がO-157などの食中毒に。食中毒被害は100人以上となり、4人の死亡者を出した。この店舗では衛生管理が疎かになっており、最終的には倒産へと追い込まれた事件
これ、全部コンプライアンス違反にあたるんだね。
コレ以外にも、例えばセクハラやパワハラ、残業代未払いや不当解雇、賃金未払いなんかもコンプライアンス違反の事例として挙げられるよ。
コンプライアンス推進、具体的内容とは?
● コンプライアンス教育を推し進めるためには
【行動規範の策定】
社員のあるべき姿、行動の規範を作成して定めておく。また、この行動規範に則るように、社員にも積極的に声をかけたり、役員がメッセージを発信したりする必要がある
【コンプライアンスに沿った規定の整備】
例えば就業規則など、法令に則った規定を整えていく必要がある。これらの規定はわかりやすく、誰でもわかるように明文化する必要も
【コンプライアンス推進の担当を設置】
法令遵守されているかを管理したり、コンプライアンス教育を行ったりする専門部署なども必要。万が一コンプライアンス違反が見つかった際の対応、報告等も、速やかに行うことが求められる
【コンプライアンス教育の実施】
コンプライアンスを推進するためには、社員ひとりひとりに周知しなければならない。そのためのコンプライアンス教育を実施し、定期的な研修等を行う必要がある
コンプライアンス専門の担当部署も必要だし、周知のためには定期的な教育も必要なんだ。
コンプライアンス違反がある、もしくはコンプライアンス違反が起こりそうな場面があれば、早急に対策する必要がある。
それが、企業や事業を守り、社員を守ることにもなるんだよね!
コンプライアンスとCSRは切っても切り離せない関係
でも、具体的にはよくわからないよ。
例えば、社会的責任といっても、企業が対象とするのは「株主」だったり、「取引先」だったり、「従業員」だったり、色々だよね。
ときには地域の人々にも企業が責任を負うことになる。そんな社会的責任の所在を明らかにしておくのがCSRと言ってもいい。
まぁ、誰に対してどんな責任を負うのか、明確にしておくってことかな?
具体的には、企業倫理、コーポレートガバナンス、SDGsなど、これらの項目で社会的責任の所在が明確化されているよ。
● 社会的責任の所在を明らかにしておくのがCSR
【企業倫理】
企業が事業を行うなかで、守るべきものが企業倫理には反映される。法令遵守はもちろん、清潔な労働環境を守る、道徳的な考え方に従うなど、社会規範なども含んだ倫理観を示すもの
【コーポレートガバナンス(内部統制)】
内部統制とある通り、コンプライアンスが遵守されているかモリタリングチェックなどを行うこと。自発的に社内のセルフチェックをして、きちんとコンプライアンスが遵守されているか、どのような現状課題があるかを確認する取り組み
【SDGs(持続可能な開発目標)】
SDGsとは、「Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標」のこと。2015年に国連サミットで採択された、2030年までに達成されるべき17の目標のことを指す。CSR達成のために、SDGsを基準として考える企業が増えている
実はCSR経営を進めるうえでは、コンプライアンスがとても重要な考え方になる。
そもそも法令遵守して、社会規範にも則っていく考えがコンプライアンスなので、それって社会的な責任を負う姿勢として欠かせないポイントだよね。
社員教育として馴染んだ「コンプライアンス」
例えば、社員に対して“アレはだめ”“コレはだめ”と言っても、禁止事項ばかりでは窮屈に感じられちゃう。
でも、「コンプライアンスだからね」と言えば、すんなり受け入れられる不思議なところがある。
上から「悪いことをするな」と言われ続けるのはあんまり気分も良くないし……。
コンプライアンスはリスクマネジメントとしてとても便利だったということも、ここまで広がりを見せた要因かもしれないね。
CSR経営やコンプライアンス推進は、その企業を知るより基準になると思うよ。
※こちらの記事の内容は原稿作成時のものです。
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