「SDGs」は持続可能な社会を実現するために採択された17の目標で、アパレル業界においても重要性が増しています。特にファストファッションの成長による大量生産・大量消費は、環境や労働に関する問題が指摘されています。

そこで本記事では、アパレル業界でSDGsが注目されている背景や業界の課題、企業事例について紹介します。

アパレル業界でSDGSが必要とされる理由

SDGsは2015年に国連サミットで採択され、労働や人権など17の項目にわかれている世界的な目標です。全ての人や組織はSDGsの課題に取り組み、世界のさまざまな問題を解決していくよう求められています。

このような大きな流れもあり、多くの人が環境や人権・労働問題などの観点で企業の信頼性などを見極めるようになっています。

では、アパレル業界でSDGsが必要とされている具体的な理由について紹介します。

環境への負荷が大きい生産と消費の仕組みが構築されている

アパレル業界でなぜSDGsが必要とされているのか。

それは環境に影響を与える大量生産・大量消費の仕組みが部分的に強く残っているからです。

アパレルは季節やトレンドによって商品の移り変わりが激しい業界です。需要を予測するのは難しく、廃棄量を増加させやすい側面もあります。もちろん、積極的に生産工程の改善を進めている企業や環境に配慮された素材開発を行う企業も多数存在していて、状況は変わりつつあるといえます。

しかし、トレンドを取り入れた衣料品を大量生産・販売していくファストファッションの流れもあり、消費者にとって便利な一方、大量の廃棄を生む構造といえなくもありません。

このような大量生産・大量消費の構造は、資源の浪費につながるほか、製造過程で大量の水を消費したりCO2を排出したりと環境負荷を増加させます。

劣悪な労働環境でアパレル製品が生産されている側面もある

ファストファッションの流れを取り入れているアパレル企業の動きが、労働問題につながっている側面があるのではという指摘があります。

ファストファッションの大きな特徴は、衣料品を低価格でスピーディに大量生産・販売する点です。消費者目線で見た場合は、さまざまなデザインの衣料品をお得に購入できる仕組みといえます。

しかし、一部の企業ではこのファストファッションの効率性を追求しすぎるがゆえに、途上国に生産拠点を置き、児童労働をさせたり低賃金で長時間にわたって労働させたりしているケースがあります。このようなケースを考慮し、労働者の人権や安全の保護の観点から、アパレル業界ではSDGsに沿った事業活動や社会貢献活動に取り組むことが、近年より強く求められているのです。

アパレル業界のSDGsに関する取り組み事例

これまでアパレル業界の一部では、環境や労働問題といったSDGs関連の課題について考慮されていないケースがあったといわれています。

しかし、SDGsを通じた人々の認識の変化によって、アパレル企業は労働や人権に考慮した事業活動や環境負荷を軽減させる取り組みを日々進めている状況です。また、国内でも取り組み事例は増えつつあり、SDGsを上手く取り入れた新しい流れも見え始めています。

ここからは、アパレル業界でSDGsに関するどのような取り組みが行われているのか、アイデアや仕組みについて紹介します。

取り組み事例①:自然素材を使用したアパレル製品の開発

自然素材や環境に優しい素材を使用したサステナブルな素材・アパレル製品の開発は、アパレル業界の課題でもある環境負荷の軽減につながります。サステナブルとは、持続可能なといった意味を持つ用語のことです。

簡単に説明すると、社会や環境を保ち続けるために考えられた物や素材などを指しています。

代表的な例としては、オーガニックコットンを使用したアパレル製品です。一般的なコットンとは異なり、農薬や化学肥料不使用といった特徴を持っていて、環境負荷の軽減につながっています。

他にも動物素材を使用しないアニマルフリーは、動物たちの犠牲を減らしながら、新しいアパレル製品を作り続けられる画期的な素材です。

取り組み事例②:無水染色で排水の発生を削減

大量の水を消費しない無水染色は、水資源の保護や排水の削減につながっています。

アパレル製品を製造する際は、繊維に染色を行う必要があります。染色を行う際には、大量の水を必要とするため、環境の負荷を高めてしまいSDGsにおける課題の1つです。

そこで無水染色素材を活用すれば、さまざまな色合いの衣料品づくりを行いながら節水や排水削減といった環境負荷軽減へ向けた取り組みも行えます。

取り組み事例③:フェアトレードで労働環境問題の改善

労働環境問題を改善させる取り組みの1つが、フェアトレードです。

たとえば、低価格で提供されている衣料品の生産コストを、途上国で働く労働者によって支えられているとします。さらに労働者は低賃金で働かされ、アパレル企業が利益のほとんどを受け取っている場合、公平な取引とはいえません。

フェアトレードは、適正な労働・適正な賃金を守りながら公平な取引を進めていく取り組みで、前述のような問題を改善させる一歩になります。

国際フェアトレード認証ラベルを付与されたりWFTO(世界フェアトレード連盟)の認証を受けたりすることが、フェアトレードの遵守をアピールする手段の1つです。

取り組み事例④:リユース事業の導入

リユース事業は、アパレル企業にとってSDGsへつながり、なおかつ他の取り組みよりも始めやすい方法でもあります。

リユースは、既存の製品を再利用していくサステナブルな取り組みです。

たとえば、古着を買い取って販売していく仕組みは、リユース事業の1つです。他にも個人間で衣料品などを売買するフリマアプリは、リユースに当てはまります。廃棄される衣料品を再度利用していく仕組みは、廃棄に伴うCO2排出の削減や資源の保護といったメリットを得られます。

リユース事業を多様に展開するトレジャー・ファクトリーのビジネスモデル

他にも古着屋・リサイクルショップは、ビジネスモデルそのものがSDGsと相性のいいリユース事業なので、近年その価値が再評価されています。そのため、SDGsを上手く取り入れているアパレル企業への就職を考えている人は、古着屋・リサイクルショップにも目を向けてみることをおすすめいたします。

アパレル大手のSDGsに関する取り組み 企業事例

アパレル業界におけるSDGsのアイデアや取り組みを確認したあとは、具体的な事例について見ていきましょう。

ここではアパレル大手のSDGsに関する取り組みを5つ紹介します。

企業事例①:ラファエロの革製品がCO2削減に貢献

画像の出典元:「株式会社FrankPR」2024年6月5日プレスリリース

株式会社FrankPRの運営している革製品ブランド「ラファエロ」は、革製品に関して高いCO2削減率を実現しています。調査サービス「デカボスコア」を用いた調査では、従来品と比較して80%ものCO2削減率を示しました。
※デカボスコア:従来の手法などと比較してどれだけCO2を削減できているのか、指標化できるEarth hacks株式会社の調査サービス

ラファエロの革製品は、バングラデシュの宗教儀式で使用された廃棄予定の牛革で作られているため、無駄の少ない生産工程となっています。さらに製品の輸送時は天然ガスを活用していて、さまざまな工程でCO2削減量が抑えられているのも注目ポイントです。

※参考:「株式会社FrankPR」2024年6月5日プレスリリース

企業事例②:セーレンのサステナブルなものづくり

画像の出典元:「セーレン株式会社」2023年8月8日プレスリリース

創業133年の株式会社セーレンは、サステナブルなものづくりへ向けて邁進し続けています。

1つ目の取り組みは、デジタルプロダクションシステムのViscotecs(ビスコテックス)を活用した在庫管理と生産方式です。

Viscotecs(ビスコテックス)は独自の生産システムで、従来の方式よりエネルギーや水の消費量を20分の1まで抑えられるようになっています。必要な量を必要に応じて生産管理できるため、余剰在庫の発生や廃棄量の増加といった課題を改善することが可能です。

2つ目の取り組みは、オリジナルブランドマッシュマニアを通じた在庫レスサービスです。Viscotecsを活用した同サービスには小ロット・高カスタマイズという特長があり、利用者の希望に応じて1着から注文を受け付けています。

※参考:「セーレン株式会社」2023年8月8日プレスリリース

企業事例③:hummel(ヒュンメル)の土に還るTシャツ

画像の出典元:「株式会社エスエスケイ」2024年3月25日プレスリリース

デンマークのスポーツブランドhummel(ヒュンメル)は、土に還るTシャツを販売しています。

Tシャツに採用されたPIECLEX(ピエクレックス)という素材は、トウモロコシやサトウキビといった植物由来のポリ乳酸で作られているのが大きな特徴です。

生産・消費したのちに廃棄ではなく、堆肥として農業や林業などに活用できるため、画期的なサステナブルファッションといえます。

※参考:「株式会社エスエスケイ」2024年3月25日プレスリリース

企業事例④:グンゼがサーキュラーファッションへ取り組む

画像の出典元:「グンゼ株式会社」2023年11月20日プレスリリース

サステナブル経営を進めているグンゼ株式会社は、サーキュラーファッションにも取り組んでいます。

サーキュラーファッションとは、サーキュラーエコノミーを応用させた考え方で、衣料品の使用後にリサイクルやリユースなどへ活用できるよう開発された製品のことです。

ただし、使用済み衣料品の繊維を再び衣料品として利用するためには技術革新が必要で、難易度の高い取り組みでもあります。そこでグンゼ株式会社は廃棄された衣料品を再資源化するため、まず繊維屑を紙へ変換させて名刺・リーフレットなどへ活用する取り組みを始めています。

※参考:「グンゼ株式会社」2023年11月20日プレスリリース

企業事例⑤:MNインターファッションがバナナの茎を繊維に

画像の出典元:「MNインターファッション株式会社」2023年2月13日プレスリリース

MNインターファッション株式会社は、バナナの茎を繊維として活用する取り組みを進めています。

バナナは廃棄される部分が多く、年間約10億トンにおよんでいます。さらにバナナの茎に関しては廃棄の際に燃やされるため、CO2の排出につながり環境負荷の大きな状態です。

そこでMNインターファッション株式会社は、バナナの茎から製造したソックスやハンドタオルを2023年に期間限定で販売しました。バナナの廃棄量削減は、環境へ配慮された活動であると同時に、バナナ農家にとってゴミの削減といったメリットにもつながっているのが特長です。

※参考:「MNインターファッション株式会社」2023年2月13日プレスリリース

まとめ

アパレル業界は、衣料品の大量生産・大量消費といった環境に関する問題と労働問題、主に2点の課題を抱えています。

そこでアパレル企業は、サーキュラーファッションを実現するための仕組み作り、環境に優しい素材の開発などを進めています。

中でもリユースビジネスは、他の取り組みと比較してすぐに導入できるほか、衣料品をそのまま再利用するという、特にサステナブルな仕組みです! 古着好きな人にとっては、楽しみながら取り組める仕事で続けやすいといえます。

SDGsへの取り組みを続けているアパレル企業へ就職したい人や関心を持っている人は、リユースビジネスにも注目してみてはいかがでしょうか。

※こちらの記事の内容は原稿作成時のものです。
最新の情報と一部異なる場合がありますのでご了承ください。


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