トイカメラ「Toy Camera(=おもちゃカメラ)」って、知ってますか?
スマホのカメラは便利で高機能です。それでもトイカメラで遊ぶ人が多いのは「偶然性」が楽しいから。コントロールしづらいマシンを自分なりの工夫で面白いものに変えていくことができるのが、トイカメラ撮影の魅力です。
今回は「Kenko DSC Pieni」というデジタルトイカメラをレビューしながら、トイカメラ写真の面白さや撮影のポイントなどを紹介していきます。
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トイカメラにはどんな特徴があるの?
トイカメラは価格も仕様も安価なカメラのことです。
通常、カメラのボディには金属や堅牢な樹脂、レンズにはガラスが用いられますが、トイカメラの多くではボディやレンズにプラスチックが使われます。
そのため、写真に歪みが出たり、ピントが思ったように合わなかったり、かぶり(ボディ内に光が入り白くなること)が発生したりするのです。このような現象は、いわゆる精密機器のカメラの世界では「不良」として扱われます。
しかし、これらの現象も趣があり、「偶然性」がとっても面白いのです。
普通なら失敗写真と切り捨てられる物を愛でるというのはとてもマニアックですが、映画でいうところのB級・C級映画のように、トイカメラは80年代から愛されてきました。
今回選んだのはKenko DSC Pieni
実際にレビューするカメラは、デジタルカメラのトイカメラ「Kenko DSC Pieni」です(以下に登場するスペックや機能は2016年7月発売モデルのもの)。
ブルー、イエロー、ピンク、ブラックの4色の中から、今回はクラシカルなイメージのブラックをチョイス。価格は某有名ショッピングサイトで税込2,977円でした。パッケージもナチュラルな感じで可愛いですよね。
【Kenko DSC Pieni スペック情報】
- ボディ寸法 約51×36×18mm
- 重量 約18g(付属品除く)
- イメージセンサー 1/10型 CMOS
- 総画素数(有効画素数) 131万画素
- レンズ f=3.2mm F2.8
- 撮影距離 標準:約0.3m〜∞
- 静止画サイズ 1280×1024
- 動画サイズ 720×480(30fps)
- シャッタースピード 1/100秒
- ISO感度 ISO100
Kenkoは、カメラのレンズフィルターで知られる会社。カメラ愛好家なら知らない人はいないほどの有名メーカーです。そんなKenkoが発売したトイカメラとあって、筆者も興味が深々。
まずはパッケージの内容を確認!
DSC Pieniのパッケージの中に入っているのは、カメラ本体と充電用コード、ストラップです。
ここで注意したいのが、記録用のMicro SDカード(SDHCカードも可)は別売りということ。
すぐに使用したいなら、Micro SDカードとカードアダプタも同時に購入することをおすすめします。
充電はPCからでもコンセントからでも大丈夫。USBが接続できれば充電できます。
写真の仕上がりを確認するには、Micro SDカードのデータをPC等に取り込む必要があります。カードスロットルのないPCやタブレットの場合は、カードを読み込むためのカードリーダーなども必要です。
トイカメラ Kenko DSC Pieniの4つの魅力
さて、簡単にDSC Pieniの魅力的なポイントを4つご紹介しましょう。
DSC Pieniの魅力① “不便”を楽しめるデジタルトイカメラ
DSC Pieniの特徴は、デジタルカメラにも関わらずすぐにプレビューできないことです。デジタルカメラというのは“撮ってすぐに確認できる”良さがありますが、DSC Pieniはそれができません。
ご覧の通り、カメラ背面には何もなく……。
プレビューができないから「何が撮れているかわからないドキドキ」は十分に味わえます。
DSC Pieniに限らず、プレビュー機能が付いていないトイカメラはたくさんあります。デジタルカメラが普及し始めて早20年。この便利さの中で忘れてしまった楽しみを、再び体験できるのがトイカメラなのかもしれません。
「SNSに疲れた」あなたにも
「さっきの写真送って」「タグ付けでアップしてね」と、頼まれたことはありませんか? 最初は楽しいシェアやSNSも、毎回シェアしたりアップするのは面倒でもあります。そのためか、すぐにシェアできないアナログなフィルムカメラにも人気が集まっているようです。
DSC Pieniはデジタルカメラですが、スタイルはアナログです。「SNSに疲れちゃった」「自分の中だけで撮影を楽しみたい」と思っているなら、DSC Pieniはうってつけかもしれません。
DSC Pieniの魅力② 勘で撮影する楽しさ
DSC Pieniについているファインダー(覗き窓)は飾りです。そのため、覗いてもよく見えません。
できることは、撮りたい被写体を見つけたら、レンズを向けてひたすらシャッターボタンを押すだけ。難しいことは考えず、誰でも簡単に撮影できるのが魅力です。
DSC Pieniの魅力③ アレ・ブレ・ボケが簡単に
写真の歴史に詳しい人なら、「アレ・ブレ・ボケ」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。
アレ・ブレ・ボケの意味は以下の通りです。
● アレ(ざらざらした粒子の荒い写真)
● ブレ(ブレている写真)
● ボケ(ボケている写真)
要約してしまえば、クリアすぎない、写りすぎない写真ということですね。DSC Pieniの画素数は「131万画素」でデジタル特有のノイズ感があります。
専門的かもしれませんが、Pieniのシャッタースピードは「1/100」と遅め。トップスピードで走り抜ける電車や強風で揺れる花などは間違いなくブレます。
また、DSC Pieniは本体から30cm以内の被写体にはピントが合いません。
レンズを被写体にグッと近づければ、こんなふうにボケたイメージに。このボケを利用すれば、一層ユニークな写真が撮れるかもしれません。
SC Pieniの魅力④ 軽量ボディだからいつでもどこでも
DSC Pieniは手のひらにすっぽりと収まるサイズです。重量はなんと約18g! キーホルダーにもできそうなくらい、とっても軽いボディをしています。
高精細な撮影ができるスマートフォンですら120g〜180g程度なので、とても軽量であることがわかります。高精細カメラではありませんが、胸ポケットに入れても苦にならないサイズ感は大きな魅力です。
ボタンはとても小さいのですが、ぐらつきなどもありません。「トイカメラは価格も仕様もチープ」と前述したのですが、非常に丁寧な作りをしていると思います。さすが、カメラ用品メーカーのトイカメラです。
撮影の事前準備
パッケージを開けたらまずは充電です! 付属の充電コードで充電しましょう。
充電中は赤ランプが点灯し、充電が終わると青いランプに変わります。大体30分程度で充電完了です。
Micro SDカードを挿入
充電が完了したらMicro SDカードを入れましょう。カメラ背面から見てMicro SDカードの表が見える向きで差し込んでください。奥に押し込むようにすると、カチッと音がします。カードが小さいので、爪などで押し込むようにしましょう。
SDカードを差し込むと、上の写真のようにカード端がはみ出した状態になります。カチッとホールドされているので簡単にカードが外れることはありませんが、引っ掛けるなど、強い衝撃を与えないように注意した方がよさそうです。
※データが飛んでしまう可能性もあるので、充電してからカードを挿入するようにしてください!
写真、動画、音声メモのモードを切り替える
とっても小さなボディながら、写真だけでなく動画も音声も記録できるDSC Pieni。ファインダー横のボタンを何回か押すことでモードの切り替えができます。
ファインダーはモードランプの点灯を兼ねていますので、撮影(赤)、動画(青)、音声メモ(紫)と、色の変化を確認してから撮影を始めましょう。
※電源を入れてすぐは写真撮影モードに設定されています。写真を撮る場合は、モードを切り替えることなくすぐに撮影が可能です。
写真撮影の手順
さて、写真撮影を始めましょう!
STEP1 電源を入れる
電源を入れます。丸いON・OFFのボタンを押してください。赤いランプ(写真撮影モード)が点灯します。
STEP2 モードを設定
撮影モードを切り替える際には、MODEボタンを必要回数押して切り替えましょう。ランプの色を確認しながらモードを切り替えます。
STEP3 撮影する
撮影するときは、丸いオン・オフボタンを押せばいいだけです。撮影ボタンを押すと一瞬赤いランプが消えます。これがシャッターが切れる合図です。
シャッター音などはないので、「撮れたのかな?」と不安になるかもしれませんがランプの点灯を確認すれば問題ありません。
シャッターのタイムラグに注意!
このカメラのシャッターには「タイムラグ」があるので注意しましょう。通常、シャッターボタンを押したと同時にシャッターが切れるのですが、このカメラには多少のタイムラグがあるようです。
そのため、赤いランプが消えている間にカメラを動かしてしまうと、下の写真のように写真がブレブレになってしまいます。
シャッターを切ったら一拍置いて動かすようにすれば、ブレることはなくなります。
STEP4 撮影完了・カード取り出し
写真撮影が終わったら、ON・OFFボタンで電源を切ってください。何もしなければ75秒後に自動で電源が切れる仕様になっています。
電源が切れたのを確認したらMicro SDカードを取り出し、パソコン等へ取り込みましょう。
撮影した写真を見てみよう
さっそく、実際に撮影した写真を見てみましょう。
動物を驚かせずに撮れるのはいいかも
農園にいたヤギを撮影しました。小さなボディ、フラッシュやシャッター音もないので、動物を驚かす心配もありません。
レトロな色味も面白い
9月半ば、夕方3時頃の空です。色の出方がレトロな雰囲気になって面白くなりました。仕上がりが予測できないのがトイカメラの面白いところです。
素朴な花畑の雰囲気
トイカメラで撮影するなら、花畑や自然を撮るのをおすすめします。
花の形までは明瞭じゃなくても、咲く花の揺れる感じなどが出て、素朴さをより引き立てます。
影を撮るのはトイカメラの醍醐味
影の撮影も面白いです。人影意外にも影は写真が面白くなるのでおすすめ。
アスファルトに落ちた影ですが、トイカメラだと不思議と殺伐なムードになりません。
とにかく身近なものを撮る
写真は部屋に貼ってあったアルファベット表です。「それが何か?」という感じですが、兎に角身近なものを撮るのがおすすめ。
面白い写真ができたり、思わぬ思い出になったりします。
順光で空を入れて
太陽を背にして撮る(順光で撮る)と、白飛びがしにくくビビッドな色彩になります。青い空を入れて撮ると、撮影者の影も入らず爽やかなイメージに。
ぐるっと回転するイメージで
シャッターボタンを押すと同時に、カメラを回転させてみましょう。残像もぐるっと回転して写るので、スピード感や躍動感などを表現するのに役立ちます。
前景と後景をつくってぼかす
DSC Pieniはボディから30cm以内がボケるカメラです。ボケ感を楽しむなら手前にあるものをぼかして撮影してみましょう。
手前にある被写体にレンズを近づければ、自然とボケ感が生まれます。一眼レフカメラのボケ感とはまた違った味わい深さがあります。
【トイカメラ】楽しい撮影にするためのコツ
トイカメラライフを楽しむためのポイントをご紹介します。
トイカメラのコツ①「心のままに撮影しよう」
トイカメラはとっても自由でカジュアルなカメラです。一眼レフカメラでは「構図をどうしよう」とか「露出が〜」とか考えてしまっていた人も、難しいことは考えずに撮りましょう。
「これいいな!」
「面白くなるかも」
「撮ったらどんな写真になるかな」
と、いった心の衝動を大切にしてみてください。
トイカメラのコツ②「視点の高さを意識して!」
視点の高さを変えて撮影してみましょう。寝そべるように低い視点、脚立に登るような高い視点、普段あまり見慣れない視点は新鮮さがあります。
見上げたり見下げたりするのもいいでしょう。
新鮮さがある写真は発見があり楽しいです。撮影するときには、直立で撮影するのではなく、立ったり座ったり登ったりしながら撮影してみてください。
トイカメラのコツ③「動きのあるもの・ないもの」
写真を撮るときには動きのあるもの、ないものを交えて撮りましょう。
対比することで写真たちに新鮮さを感じることもできますし、電車や車などを撮ればその残像が写真を面白くするかもしれません。
動くものは思わぬ表情を見せることも。こちらはバスの写真ですが、平行四辺形のような形に歪んでいます。1/100というシャッタースピードが、このような歪みを生むようです。
トイカメラのコツ④「物語を感じながら」
街の中を歩いていると、裏に物語を感じるようなモチーフに出会うことがあります。
誰かが忘れた傘、年季のある看板、面白い標語なども、発見すると思わず撮りたくなるのです。
最近だと、コロナ感染症対策のための張り紙などもよく目にします。
時代を反映した風景を気軽に切り取ることができるのも、DSC Pieniのいいところなのかもしれませんね。
DSC Pieniでの撮影、注意することは?
SDカードの挿入忘れにご注意を!
DSC PieniはSDカードを抜いて充電しなければいけません。そのため、撮影前にきちんと確認しないと、SDカードの挿入を忘れてしまうことも……。
撮影前には必ずSDカードが挿入されているか確認してからお出かけするようにしましょう。
レンズに指がかからないように
“Pieniあるある”なのかもしれませんが、ボディが小さいため、レンズに手がかかりやすいです。ストラップなどがレンズの前に垂れてしまうこともあります。
モード切り替えにご注意
DSC Pieniは動画撮影も音声メモもできるトイカメラです。そのため、知らぬうちにモード切り替えされてしまう可能性もなくはありません。
写真撮影モードはファインダー付近のランプが赤く光ります。もし、写真のような青や紫のランプが光っていたら、モードを切り替えるようにしてください。
室内・夜間の撮影は向かないかも
絶対にダメということはありませんが、DSC Pieniは室内での撮影や夜間撮影には向かないかもしれません。
上の写真の撮影場所は、昼間の我が家の玄関です。
DSC PieniはISO感度が100ととても低い感度設定。室内の撮影では最低でもISO400、できればISO800くらいの感度が必要なので、だいぶ低いことはお分かりいただけると思います。
ただ、暗くても写らないわけではありません。状況を逆手にとり、撮影を楽しむことは可能です。
撮り続ければ上達も
写真は撮り続ければ上達します。プレビューができないDSC Pieniでの撮影は、最初はうまくいかないこともあるでしょう。しかし撮り続ければコツがわかりはじめます。
まず初めは、近所をフラッと散歩してみるのがいいかもしれません。
普段見ている何気ない風景が、特別なイメージを想起させるかもしれないからです。
最初から上手くやろうとせず、上達の過程を楽しむようにしてみましょう。
※こちらの記事の内容は原稿作成時のものです。
最新の情報と一部異なる場合がありますのでご了承ください。
この記事を書いたひと
神奈川県在住。森の近くで3人暮らし。コピーライターをしながら、写真教室を開いたり、アクセサリーを作ったり。趣味は韓国語と料理。環境問題や人権の保護など、社会問題に関心を寄せています。