いきなりですが、、、
「就活で困って、前に進む勇気が出ない」
こんなお悩み、ありませんか。
まじめすぎる貴方へ。
就職活動にシャカリキに取り組むのも良いですけれど、たまには息抜きをするのはいかがでしょう?
思いもよらぬイベントに、えいやーと参加するなどしてみることで。
さる11月24日、東京お台場の日本科学未来館・未来館ホールにて「ことばみらい会議2019」というイベントが開催されました(主催:東京コピーライターズクラブ)。
今年のテーマは「未来に言葉と勇気を」
広告など、さまざまなジャンルで活躍する言葉のエキスパートたちが3部構成で盛りだくさんに登場。就活で困ったときに励ましてもらえるような、珠玉の言葉の数々に出会える、とっても面白いイベントでした。
というわけで今回の記事では、就活生応援目線で「ことばみらい会議2019」の内容をレポートします!
第1部「日本語という深イイ言葉 コピーライター × 言語学者」
第1部は、「日本語という深イイ言葉 コピーライター × 言語学者」というテーマ。
登壇者は、コピーライターの尾形真理子(おがた・まりこ)さんと、言語学者の鈴木孝夫(すずき・たかお)さん。
コピーライターと言語学者のトークということで、日本語の本質に迫るエネルギッシュなトークセッションが行なわれました。
日本語の担い手は、世界で1番詩人が多い(かも)
鈴木さんは日本の言語学者の第一人者で、著作も多数。
これらを事前に読んできた尾形さんから、コピーライターの視点で気になったことを質問する形式でトークセッションは進みました。。。と見せかけて、実際は鈴木さんの独演会のパワフルすぎるステージに(笑)。
言葉のプロはコピーライターだけではない、学者にそれ以上の言葉のプロがいるんだ、と言わんばかりの勢いでございました(下の写真は、尾形さんに近頃のカレンダーのコピーライティングがなっていない!と諭しているシーン)
「日本語は、他者と自分の対立関係を考えない」
「日本語は感情表現に適している」
「日本語には“中間”というものの見方が文化として存在している」
などなど、その言説は止まることはありませんでした(しかもその一つひとつが、理路整然と説得力があるのは流石!)。
興味深かったのは、「日本語の担い手は、世界で1番詩人が多い」という話。
鈴木さんによると、新聞の朝刊で詩(俳句)のコーナーが毎日あり、詩が一部のエリートのためだけでなく、一般庶民までが楽しめる娯楽として成り立っているのは日本語のユニークな特徴である、とのこと。
確かにそうですね。日常でも言葉について悩んだとき、もうちょっとポエミーな部分を大切にしてもいいのかもしれないなと思いました。
逆らうのでなく、柳のようにしなやかに
就活の視点で思ったこと。
このトークセッション、尾形さんが鈴木さんの喋りっぷりに押されているように見せかけて、実は巧みにセッションをコントールしているぞと感じました。
どうしても、自分よりも何回りも年上の方との議論は緊張が先に立ちますが、主張でストレートにぶつかるのでなく、相手の言葉を気持ちよく引き出すというのは一つのテクニックだなぁと。広告のトップクリエイターは、こういった場面の対応も臨機応変にスマートで素敵でした(うんうん、と尾形さんはとてもうなずき上手でした)。
●おまけ「鈴木先生への4つの質問」
こちらの4つの質問は、尾形さんが事前に用意していたもの。当日はすべての質問を鈴木先生に投げることができませんでしたが、この質問自体も1つひとつが言語に対する鋭い視点に感じられたので、シェアさせていただきます!
コピーライター 尾形真理子(おがた・まりこ)
クリエイティブディレクター兼コピーライター。2018年にTangを設立してからは、企業スローガン・ネーミングなど、数々の広告制作を担当。資生堂「ラブリーに生きる」やLUMINE「わたしらしくをあたらしく」などの広告シリーズを手がけた実績もあるコピーライター。その他にも、小説やコラム、歌詞の執筆など様々な活躍をされています。
言語学者 鈴木孝夫(すずき・たかお)
言語学者兼評論家。慶応大学医学部予科へ入学後は文学部英文学科へ編入。(財)日本野鳥の会顧問や国際文化フォーラム顧問など様々で活躍。「日本の感性が世界を変える 言語生態学的文明論」や「武器としてことば」など様々な著作も持つ。
第2部「世の中の気持ちとことば コピーライター × メディアプロデューサー」
第2部は、「世の中の気持ちとことば コピーライター × メディアプロデューサー」というテーマで行われました。
登壇者は、コピーライターの磯島拓矢(いそじま・たくや)さんとメディアプロデューサーの河瀬大作(かわせ・だいさく)さん。
様々なテレビCMのコピーライティングを手掛けた磯島拓矢さんと、数々のテレビ番組をプロデュースした河瀬大作さんによる、顧客の心理に対する言葉のトークセッションが行なわれました。
社会の共通知をつくる。
お二人のトークセッションを通して、キーワードとなったのが「社会の共通知をつくる。」でした。
概念的な話になりますが、社会のみんなで知っていること(共通の話題)が増えると、人々のコミュニケーションもスムーズになり、社会全体が豊かになると言えますよね。
テレビ番組もテレビCMも、お茶の間に話題を届けるという点では共通しています。
最近は、作り手の目線を出しすぎるのでなく、社会にとって良いことは何か(=ソーシャルグッド)を念頭に、クリエイティブワークは進めていくべきだということが議論されました。
九州新幹線CM
こんなすごいCMを、ボクは他に知らない。
— 河瀬大作 (@kawabou) November 23, 2019
311の直後、これを見てボロボロ泣いた。
絶対にかなわない、って思った。
明日、これをつくった人と登壇する。
電通のクリエイティブディレクター・磯島拓矢。
心が震えるほど、嬉しいです。https://t.co/CG4vKEU9oRhttps://t.co/x4zQF2qVZX
例えば、磯島さんが関わったJR九州新幹線開通のCM、ご存知でしょうか?
● 九州新幹線全線開業CM(CM制作会社・ティーアンドイーによる公開版)
このCMは東日本大震災が起こった時期にわずかな期間しか放送されなかったのですが、CM自粛の時期に一般の人からの「またこのCMを流して欲しい」という大反響があり、見事復活して流されたものです。
CMを見てもらうとわかるのですが、広告という枠を越えて、社会を豊かにするインフラを届けるというメッセージ(=ソーシャルグッド)を強く感じますよね(なぜだかわかりませんが、このCM、涙がこぼれてしまうのはなぜでしょう)。
プロフェッショナル 仕事の流儀
また、 河瀬さんが手がけられた有名なNHKの番組、「プロフェッショナル 仕事の流儀」をご存知でしょうか?(愚問をすみません)
この番組が正式にスタートする前、パイロット版として、日本を代表するプロダクトデザイナー深澤直人さんを取り上げた回を製作したそうです。
NHKでは一般公開する前に必ずモニターの方によるチェックがあるそうなのですが、このパイロット版を自信作として披露したところ、モニターの方からの反応は散々たるものだったそうです(「このおじさん、誰ですか?」レベルの反応 笑)。
このとき、改めて作り手のエゴに走るのでなく、社会一般の人の視点を忘れてはいけないと感じたそうです。
ソーシャルグッドであるかどうか、一般の人の視点で価値があるかどうか。
就活のあらゆるステップで、自分視点になりすぎてませんか? ときどき一歩引いて、自分が考えていることがソーシャルグッドかどうか、社会一般の人の視点(顧客視点)を忘れていないかどうか、考えてみるのも大切だなと感じました。
コピーライター 磯島拓矢
電通に所属。エグゼクティブクリエイティブディレクター兼コピーライター。旭化成「昨日まで世界になかったものを。」やポカリスエット「自分は、きっと想像以上だ。」を手掛けたコピーライター。
メディアプロデューサー 河瀬大作(かわせ・だいさく)
NHK入局。メディアプロデューサー兼NHKエンタープライズ。メディアプロデューサーとして「プロフェッショナル 仕事の流儀」や「有吉のお金発見突撃!カネオくん」など数々の番組を手がける。「NHK✖️日テレ 60番勝負」で2013年ソーシャルテレビアワード大賞などを多数受賞。
第3部「コトバはあとからついてくる コピーライター × 開発者」
第3部は、「コトバはあとからついてくる コピーライター × 開発者」というテーマで行われました。
登壇者は、「読みたいことを、書けばいい。 人生が変わるシンプルな文章術」を上梓し今最もホットなコピーライターの一人である田中泰延(たなか・ひろのぶ)さんと、開発者という肩書きでダイナミックに活躍中の川田十夢(かわだ・とむ)さん。
常識にとらわれないお二人による、近未来のテクノロジーと言葉についてトークセッションが行われました。
“反物質の生成 対象減 地球の滅亡”
第1部の鈴木孝夫さんに勝るとも劣らず、第3部の田中さんも最初からエンジン全開のプレゼンがスタート!
「今すぐはじめよう仮想通貨!」
「お台場フジテレビの球体と、科学未来館の球体が、1つになるとき、反物質が生成され対象減、地球は滅亡する!」
、、、といった具合で、何の話かはまったくついていけないけれど、なんだろうこのエネルギー笑
お笑いLIVEのように暴れまくり、大爆笑の嵐。思わず笑ってしまいながら、一流の広告クリエイターはこうやってオーディエンスの心を鷲掴みにするのか、と関心させられました。
場が温まったあとは、いきなり真面目モードで著作「読みたいことを、書けばいい。 人生が変わるシンプルな文章術」 の話へ。
人はなぜ書くか? → 何かに感動するから
書けないときはあえて書こうとするのでなく、まずは何かに感動しなさい。田中さんのこの言葉は、コピーライティングだけでなく、日常の言葉においても非常に参考になる着眼だなと思いました。
良いARと悪いARの違い
現在は開発ユニット「AR三兄弟」の長男として活動し、クリエイターとして多彩な顔を持つ川田十夢さんからは、未来のAR(拡張現実)でできることについてデモンストレーションがありました。
現在の技術があれば、例えばオリンピック選手の動きを3Dでキャプチャーすることができるそうです。自分のアバターを作り、このキャプチャーしたオリンピック選手の動きを適用させれば、あたかも自分がオリンピック選手のようにアスリートとして動いている感覚をARで実現できます。
ARの極意のようなもの。それは、できるだけ現実に近い部分を残した方が没入感を得られるとのこと。
例えば、技術的には空を飛ぶ人間の動きをARで実現できますが、それだと現実から離れすぎていて没入感は弱まる、というのが川田さんの考え。一方、アスリートの動きをARで実現するやり方は、重力という現実が残っている人間の動きなので、没入感を表現しやすいということでした。
田中さんは語彙力が豊富で、新しい技術について簡明な言葉で説明されているのが印象的でした。世にない新しい技術を使いクリエイティブな活動を続けるには、それを一般の人にわかりやすい言葉で伝えることも不可欠なんだなと感じました。
●おまけ「西野カナ、JUJU、青山テルマの違い」
川田さんからはARの話だけでなく、1つだけ取り上げると、テキストマイニングについての話もありました。
おじさん世代には難しい、【西野カナ】、【JUJU】、【青山テルマ】の違いについて、歌の歌詞をテキストマイニングし、まとめたものがこちら。妙に腑に落ちるものがあったのでシェアさせていただきます!
コピーライター 田中泰延(たなか・ひろのぶ)
電通をコピーライターとして24年勤務後に退職。現在は「青年失業家」でライターとして活躍。著書「読みたいことを、書けばいい」は、累計16万部突しベストセラーとなった。
開発者クリエイター 川田十夢(かわだ・とむ)
10年間メーカーで開発と特許開発を経験後独立。開発家兼AR三兄弟。現在は開発ユニットAR三兄弟の長男として活躍。「笑っていいとも!」や「情熱大陸」などにも出演経験あり。劇場やプラネタリウム、百貨店など様々な拡張を手がけている。
「ことばみらい会議」は就活での不安を励まされたり勇気がもらえるイベントだった
「ことばみらい会議2019」では、現役コピーライターやクリエイターに会って話を聞くことができる貴重なイベントでした。就活で疲れたときに元気をもらえそうな言葉もたくさんありました。
日常に新しい視点の気づきを。皆さんが楽しい仕事の扉を開くきっかけになれば幸いです。
※取材協力:東京コピーライターズクラブ(TCC)
※こちらの記事の内容は原稿作成時のものです。
最新の情報と一部異なる場合がありますのでご了承ください。
この記事を書いたひと
「仕事の数だけ物語がある」をテーマに、JOB STORYの編集部がさまざまな視点で記事をお届けいたします。