テレビのニュースを見ていると、ときおり激しい討論をしている国会議員の姿が映し出されます。

また、バウムクーヘンを半分に切ったような会議場に、国会議員がたくさん座っていて、それを背景に「補正予算が成立した」「○○氏が内閣総理大臣に指名された」といったテロップが流れるときがあります。

バウムクーヘンを半分に切ったような会議場に、国会議員がたくさん座っていて



国会議員はどんな仕事をしているのかと聞くと、おおよそこうした場面を思い浮かべるのではないでしょうか。

しかし、それはほんの一部の姿です。

彼たち・彼女たちは、あの場に立つために、大変多くの仕事を日夜こなしています。

今回は、国会議員が実際に国会でしていること(仕事)について、ご紹介したいと思います。

※こちらの記事の内容は原稿作成時のものです。
最新の情報と一部異なる場合がありますのでご了承ください。



国会って何?

国会って何?



そもそも国会とは、どういった場所なのでしょうか。

日本国憲法第41条では、「国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。」とされています。

国会という機関は、どうやらふたつの意味を持っているようです。

順に見ていきましょう。

まず前半部分では、「国会は、国権の最高機関」と書いてあります。

現代日本では、民主主義実現のために、国権が立法・行政・司法の3つに分けられています(三権分立)。ですので、この文言は、「国会は、行政機関や司法機関よりも上ですよ」という意味になります。

なぜかと言うと、国会が、主権を持つ国民によって選ばれた国会議員で組織されているからです。

行政も、国会議員だけと見えてしまいがちですが、実は国民が選んだ以外の人も参画できます。司法に至っては、そもそも選挙がありません。

国会だけが、間接的とはいえ、国民の意思100%で構成されている国権の機関なので、憲法で最高とされているのです。

では、後半部分を見ていきましょう。

立法は、簡単に言えば法律を作ることです。つまり国会は、法律を作る唯一の機関となります。

つまり国会は、法律を作る唯一の機関となります



一方、行政は、法律の実現をはかるところです。この活動を担当する集団を内閣と言います。そのトップが内閣総理大臣(首相)です。

司法は、法律に則って裁くところです。最高裁判所があり、その下に高等裁判所、地方裁判所、家庭裁判所、簡易裁判所という下級裁判所があります。

たとえば、学校の生徒会が「夏はワイシャツだと暑いので、ワイシャツ以外にポロシャツを着ることができる」というルールを作るとします。このプロセスが立法です。

ワイシャツ以外にポロシャツを着ることができる」というルールを作るとします



ただ、ポロシャツだけだと、どんなポロシャツがよくてどんなポロシャツがだめなのかわかりません。ルールを元に、より具体的なルールを定めて、生徒たちが困らないように運用する必要があります。これが行政です。

それから、もしかしたら生徒の中に、Tシャツを着てくる人がいるかもしれません。こういう人たちには、ルールに則って注意をする必要があります。これが司法です。

国会には衆議院と参議院がある

国会は、衆議院と参議院で構成されています。生徒会がふたつある、とイメージするといいでしょう。

衆議院と参議院は、さまざまな部分で違いがあります。

たとえば衆議院議員の任期は4年に対して、参議院議員は6年です。

それから衆議院にだけ解散があります。

衆議院にだけ解散があります



解散は、一旦みんな国会議員をやめること。それをして、国民に選び直してもらいます。選挙です。

任期が短く、解散もある衆議院は、参議院よりも国民の考えが反映されやすいとされています。

そのため、国会で決める物事のうち、法律の制定や改廃、予算の議決などは、衆議院の意見のほうが通りやすくなっています。

国会議員は国会で何をしているの?

国会議員は、唯一の立法機関である国会を構成している人(たち)です。

国会議員は、国民をより守るための法律を作るために、国会で日夜さまざまな仕事をしています。

主なものをご紹介しましょう。

本会議で法案の審議

本会議で法案の審議



法案の審議を行うことを本会議と言います。あのバウムクーヘンを半分にしたような会議場で行われるものです。

法案(法律案)は、法律のたたき台のようなものです。主に内閣が作成し、委員会(あとでご説明します)を経て、国会の場に提出されます。国会議員が発案するときもあります。

審議は、簡単に言うと「こんな法案があるんですが、どう思いますか?」と国会議員に聞いて、賛成意見や反対意見を出し合う。そして、最終的な答えを出す。この一連の流れのことです。

法案は、本会議に出席した議員の過半数が賛成したら可決します。

本会議は、衆議院と参議院それぞれ行われています。法案が法律になるためには、このふたつの議院で賛成多数とならなければいけません。

ちなみに、衆議院の本会議は火・木・金曜日、参議院の本会議は月・水・金曜日に開かれるのが原則となっています。

衆議院・参議院の各本会議では、こうした法律以外に、予算や条約承認の締結、内閣総理大臣の指名など、さまざまな議決が行われています。

委員会で法案の審査

委員会で法案の審査



委員会は、本会議での討論や採決をスムーズに行うために、事前に話し合いをするところです。委員会は本会議と同じく、衆議院と参議院、それぞれにあります。

委員会には、予算委員会や内閣委員会、総務委員会、文部科学委員会、厚生労働委員会などの17の常任委員会。それと、必要に応じて、その都度設置される特別委員会に大きく分けられます。

委員会で有名なのは、予算委員会です。よくテレビで報じられています。国会議員が手を上げて、マイクがたくさん設置されている台の前に立ち、激しい討論をしているそれです。

内閣あるいは国会議員によって作られた法案は、法案の内容に応じて、いずれかの委員会で議論され、本会議へと送られます。ときおり専門家の意見を交えるときもあります。

このように、国会議員は、衆議院・参議院のどちらかの本会議に定期的に参加しつつ、自分が所属している常任委員会で日夜審議をしています(委員会を掛け持ちしている国会議員もいます)。

政党での活動

政党での活動



国会議員は、政党に所属していれば、その政党が催す会議に参加します。党大会や両院議員総会はそのひとつです。

党大会は国会議員と代議員で構成された、政党で一番力を持っている機関です。

両院議員総会は、衆議院議員と参議院議員、両方合わせて構成された政党の集まりを言います。最近だと、安倍晋三氏のあとの自民党総裁を決めるときに開かれ、そこで菅義偉氏が選ばれたのが話題になりました。

政党は同じ信念を持っている人の集まり

政党は、簡単に言うと、政治に対して同じ考え方を持つ人の集まりです。

もちろん、人の考え方はそれぞれですよね。「夏にポロシャツが着れるようにしたい」と考えに対して「いいね!」と賛同する人もいれば、「もう少し慎重に考えようよ」と考える人もいます。政党がたくさんあるのは、そういう理由です。

ところで、先程、法案は本会議に出席した国会議員の過半数を獲得できれば、可決するとお話しました。

なので、同じ考えの人が本会議にたくさんいればいるほど(政党の議席数が多ければ多いほど)、自分たちが考えたルールが決まりやすくなります。

政党の議席数が多ければ多いほど



その議席数は選挙で決まるので、政党に所属している国会議員は、日頃から有権者と親睦を図る努力をしています。また、本議会での勢力を拡大するために、「あの党の考えは、うちと似ているな」といって手を組むこともあります。

よくニュースでは、与党・野党と聞きますよね。与党は、まさに議院の中で、ルールを決める力を強く持っている集まりを言います。それ以外が野党です。

それ以外にもたくさん仕事がある

国会議員は、本会議・委員会・政党関連の会議のほか、政策の勉強会や会食に出席して平日を過ごします。

また、週末は選挙区である地元に戻り、会食やイベントに足を運んで、支援者との親睦を図ります。ずっと支持してもらい、選挙で有利になるためです。

金曜日に地元に帰り、だいたい火曜日に国会に来ることから、「金帰火来」という言葉もあります。

国会が閉会しても、まるまる休めるわけではありません。

再び地元に戻って国政報告会を開き、国会でどんな議論が行われていたのか有権者に報告し、意見を交わし合います。地域のイベントやお祭りには積極的に参加し、その合間を縫って街頭演説をすることもあります。

国会議員はどうやって選ばれるの?

国会議員はどうやって選ばれるの?



選挙は大きく分けて、衆議院議員選挙と参議院議員選挙の2種類です。前者は解散総選挙、後者は通常選挙と呼ばれています。

衆議院議員選挙は、小選挙区制と比例代表制のふたつがあります。

小選挙区制とは、ひとつの選挙区の中で、一番票を得た人が選ばれる制度です。現在289の選挙区があり、289人の衆議院議員がここで選ばれます。

比例代表制とは、各党が獲得した得票数に応じて議席数を算出し、その数の分だけ立候補者が選ばれる制度です。現在11のブロックがあり、計176人がここで選ばれます。なお、各党において、どの立候補者が選ばれるのかは、党内であらかじめ決められていた順番によって決まります。

対して、参議院議員選挙は、選挙区制と比例代表制のふたつです。

選挙区制は、各都道府県ごとに、一票の格差が起きないように議席数を割り振り、そこでたくさん票を得た人が選ばれる制度です。選挙区選出議員の数は146人(令和4年以降は148人)ですが、参議院の選挙は半数改選なので、1回の選挙では73人(同74人)が当選します。

参議院議員選挙は、選挙区制と比例代表制のふたつです

一票の格差とは、有権者が投じる一票の価値の差です。

たとえば、有権者が5人しかいない選挙区Aと、有権者が100人いる選挙区Bがあったとします。選挙区Aのほうは、3人が同じ人に投票すれば当選確実です。しかし選挙区Bの場合、確実に当選させるには51人以上の票が必要になります。

なので、有権者が多いところは当選できる人がたくさんいます。

東京都は12人区と決められているので、1回の選挙で6人が当選します。神奈川県や大阪府は8人区なので4人です。

逆に、徳島県と高知県、鳥取県と島根県は合わせて1区とされていて、1回の選挙でそれぞれ1人選ばれます。

有権者が多いところは当選できる人がたくさんいます

参議院議員選挙における比例代表制は、選挙区がなく、全国の候補者が一斉に戦う制度を言います。比例代表選出議員は96人(同100人)なので、1回の選挙の当選者数は48人(同50人)です。

選挙では、党名もしくは党名と所属している方の名前を投票用紙に書きますが、まず党ごとの得票数で議席数が振り分けられます。その上で、投票用紙に名前が書かれている票が多い人から順に、その席を獲得します。

※注:上記でお伝えしている議員数や各選挙区の当選人数は、いずれも2020年10月現在のものです。

国会議員になるルートはさまざま

国会議員になるルートはさまざま



国会議員になるには、最終的に選挙で勝つしかありません。ですが、選挙に出るまでのルートは人によってさまざまです。

たとえば、ジョブストーリー党の公募をクリアして立候補した議員がいます。公募は、政党が立候補者を募集することです。

あるいは仲間内で市民団体を作り、国会議員と会合をする中で候補者のオファーが来た人もいます。貧困問題を解決しようと市議会で活動していたら、チャンスが回ってきた人もいます。

このように、国会議員になるチャンスを掴むまでの話は人の数だけあります。

ただ、その人たちの多くは、自分の政治に対する気持ちを周りの人に話しているという特徴があります

最初は強力なバックボーンがなくても、地道に活動を続けていったら、いつの間にかサポートしてくれる人が増えていった、知り合いが現役の国会議員とつないでくれた、というケースは少なくないようです。

最後に

国会議員の仕事について、駆け足で紹介してきました。

国会議員の仕事の大枠だけでもつかめれば、ニュースの見方が大きく変わります。

「これは国会の話」「あれは内閣の話」「それは政党の話」と、何について報じられているのか区別できるようになるからです。

よければ参考にしてください。


※こちらの記事の内容は原稿作成時のものです。
最新の情報と一部異なる場合がありますのでご了承ください。


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