「ご査収(さしゅう)」は、ビジネスメールでしばしば使われる言葉です。
「取引先からの送られてきたメールに書かれていた」ときに用いることが多い
「自分の上司がさらに立場の上司に送ったメールをたまたま見る機会があり、そこに入っていた」
ということで知った人も多いと思います。
フリーライターである私も、仕事柄、クライアントさんからのメールで見たことがあります。
では、この「ご査収」にはどのような意味があるのでしょうか。
この記事では、「ご査収」の意味を解説するとともに、自分で使うときのポイントや使うときに役立つテクニックなどをご紹介しています。
相手に言われたときの対応方法も解説しているので、「ご査収」が入ったメールが来たのだが対応に困っている……というときにもご活用ください。
※こちらの記事の内容は2020年4月に公開後、
2021年8月に再度内容を見直し加筆・リライトしたものです。
「ご査収」の意味は?実際の使い方や返信方法
最初に、「ご査収」について、その意味や実際の使い方、返信の仕方などの概要をご紹介します。
● ご査収とは :
尊敬を示す「ご」と、書類や資料をよく調べた上で受け取ることを意味する「査収」を組み合わせた言葉
● ご査収の意味 :
『送った書類を、よく確認してから受け取っていただけますか?』
● ご査収を使うシーン :
① メールやチャットを使って書類や資料を送るとき
② 書類や資料を郵送した旨を相手にメールやチャットで伝えるとき
● ご査収の使い方:
下記のようなフレーズをメッセージの中に入れる
【例文】
「○○の報告書を添付ファイルにて送付いたします。ご査収のほど、よろしくお願いいたします」
● ご査収が書かれたメッセージへの返信の仕方:
書類や資料を確認することが求められているので、確認した旨、あるいはこれから確認する旨を返信する
【例文】
「ありがとうございます。拝受しました」※資料を確認して確かに受け取った場合
「ありがとうございます。確認いたします」※これから資料を確認する場合
● ご査収の類語:
ご確認、ご検収
「ご査収(さしゅう)」とは、尊敬を示す「ご」と、書類や資料をよく調べたうえで受け取ることを意味する「査収」を組み合わせた言葉です。
「送った書類を、よく確認してから受け取っていただけますか?」という意味で、メールやチャットを使って、書類や資料を送るときに添える言葉として使われます。相手に直接手渡しするときに言うことはあまりありません。
一方、相手が「ご査収」を使ってきたときは、書類や資料を確認することが求められているので、確認した旨、あるいはこれから確認する旨を返信します。
なお、「ご査収」には、「ご確認」や「ご検収」のような類語があります。それぞれの違いは次のとおりです。
● ご確認:
「ご査収」と異なり、受け取りの意味が含まれません。「ご査収」では資料の所有者が変わり、「ご確認」の場合はそれがないイメージです。ただ社内の人同士や、親しい間柄の場合は、混同されているケースがままあります
● ご検収:
検収とは、納入された商品の数やクオリティをよく確認したうえで受け取ること。「ご査収」では金銭の授受が直接発生しないものをやり取りするとき、「ご検収」は直接発生するものをやり取りするときに用いるイメージです
「ご査収」を正しく使うための3ルール
「ご査収」は、ビジネスでしばしば用いられる言葉です。使い方をマスターしておけば、相手に対して良い印象を与えることができます。「あの人は言葉を知っている」と、相手からの評価も高まるかもしれません。
しかし、そうした効果を得るためには、「ご査収」を正しく使うことが大切です。次の3つのルールをおさえておくことをおすすめします。
【ご査収を正しく使うための3ルール】
① 使う相手は目上の人
② 添付するものが何もないときは使わない
③ むやみやたらに漢字表記しない
ルール① 使う相手は目上の人
「ご査収」を使う相手は、基本的に、目上の人(上司や先輩、取引先など)です。
同僚や部下に使うのは絶対に間違いとは言い切れませんが、比較的かっちりした印象を与えるので、人によっては何か距離を取られているような印象を与えてしまうでしょう。
彼らに送るときは、「ご確認をお願いします」「確認してもらえたらうれしいです」のように、話し言葉に寄せたほうがかえって好印象です。
ちなみに、「ご査収は、社内の人間に使うのはOKなのか?」という悩みがありますが、目上の人であれば問題ありません。
ルール② 添付するものが何もないときは使わない
「ご査収」は、単なる報告やお礼など、何も渡すものがないときに記載するのは誤りです。
何も渡すものがないときに使うと、かえって相手に、「ご査収のほど……とあるけど、添付に何もない。忘れたのかな…?」と思わせてしまうことがあります。
あとで相手から、その確認メールが来る、なんていうこともあるので注意しましょう。
ルール③ むやみやたらに漢字表記しない
目上の人に送るということで、もっと丁寧に表現したいと思い、漢字表記にしたほうがいいのでは?と考えるときもあるでしょう。
たとえば、「ご査収のほど、よろしくお願いいたします」であれば、「ご」→「御」、「ほど」→「程」、「よろしく」→「宜しく」、「いたします」→「致します」といった具合です。
ただ、結論から言うと、「ご」「ほど」はできるかぎりひらがな、「よろしく」「いたします」は漢字NGです。
理由を簡単にまとめたので、参考にしてください。
「ご」・・・漢字表記 △
→ 堅苦しい印象を与えたり、相手によっては嫌味になったりしてしまうため、できるかぎりひらがなにする
「ほど」・・・漢字表記 △
→ 同上
「よろしく」 ・・・漢字表記 ×
→ 文化庁が公開している常用漢字表で、「宜」の表記は「ギ」のみで、「よろしく」のときには使わないと記されている
「いたします」 ・・・漢字表記 ×
→ 「よろしくお願いいたします」の場合の「いたします」は謙譲を示す補助動詞のため、漢字にするのはNG
相手別に紹介!「ご査収」を使った例文
「ご査収」は、上司や取引先などに向けて使う言葉です。では、実際にどのように使うのか、その例文を使う相手に分けてご紹介します。
上司が相手のとき
上司に書類を提出する際、「ご査収のほど、よろしくお願いいたします」と添えれば、上司に気持ちよく受け取ってもらえます。仕事に対して真摯に向き合っている印象も与えられるでしょう。
「ご査収」を使うときのポイントは、上司に何を査収してもらいたいのか、わかりやすく伝えることです。
【例文】
「○○の報告書を添付ファイルにて送付いたします。ご査収のほど、よろしくお願いいたします」
「○○の企画書を添付いたしますので、ご査収のほど、よろしくお願い申し上げます」
取引先が相手のとき
取引先には、見積書や請求書、企画の資料などを送るときに、「ご査収」がよく使われます。
上司に送るときと同様、丁寧な表現を心がけ、相手に何を確認してもらいたいのかをきちんと伝えることが大切です。
ただし、相手との関係によっては、相手に配慮した言葉を入れたり、確認後に相手にどう対応してしてもらいたいか記載したりしたほうがいいときもあります。
不安であれば、送る前に上司や先輩に見てもらうのがいいでしょう。
【例文】
「本日、請求書を発送いたしました。お忙しいところ大変恐れ入りますが、ご査収のほど、よろしくお願い申し上げます」
「先日お問い合わせいただきました○○の資料を、添付ファイルにてお送りします。お手すきの際に、ご査収いただけますと幸いです。ご不明な点がございましたら、下記メールまでお問い合わせください。何卒、よろしくお願い申し上げます」
「ご査収」を使うときに役立つテクニック2つ
「ご査収」という言葉は、日常ではまったく触れないものの、ビジネスでしばしば使われている言葉です。
「ご査収」の意味を知って、「このときは、ご査収という言葉のほうがいいな」とわかるようになり始めると、あっという間に結構な頻度で使うようになっていくでしょう(私も「ご査収」の意味を知って使うようになってから、3日に1回くらいのペースで使うようになりました)。
もし「ご査収」を頻繁に使うようになり始めたら、よければ次のことを試してみてください。
単語登録でスピードアップ
「ご査収のほど、よろしくお願いいたします」「ご査収くださいませ」は地味に長い言葉なので、よく使うようになると、その都度書いていたら若干負担になるときがあります。ですので、単語登録をしておくのがおすすめです。
ちなみに、私の場合は、「ごさ」と打って変換キーを押すと、「ご査収のほど、よろしくお願いいたします。」と出るようにしています。
単語登録をしておけばスピードアップができるだけでなく、誤字脱字が自ずと防げるのもメリットです。
語尾がかぶらないパターンの習得
特にメールのときに起こりがちなのですが、「ご査収」のフレーズを入れたことで、同じ語尾がずっと続いてしまうときがあります。
少し極端ですが、以下のようなケースです。
「ご返信いただきまして、ありがとうございます。お問い合わせくださった資料をお送りしますので、ご査収のほどよろしくお願いいたします。もしご不明な点がありましたら、お気軽にご質問いただけたらと思います。どうぞ、よろしくお願いいたします」
言っている内容はこれでも伝わるのですが、語尾を変えたほうがリズム感が出て、少なくとも相手に変な印象を与えない文章になります(あと、ご査収フレーズを使いこなしている感が出ます)。
「ご返信いただきまして、ありがとうございます。お問い合わせくださった資料をお送りしますので、ご査収いただければ幸いです。もしご不明な点がありましたら、お気軽にご質問いただけたらと思います。どうぞ、よろしくお願いいたします。」
「ご査収のほど、よろしくお願いいたします。」をよく使うフレーズにしているなら、「ご査収いただければ幸いです」「ご査収くださいませ」など異なる語尾のストックを持っておくことをおすすめします。
「ご査収」の返信例 素早く正しく返せるようにしよう
最後に、「ご査収」が入ったメッセージに対しての返信例をご紹介します。
「ご査収」というメッセージが送られてくるとき、そこには、「添付の資料の内容が間違っていないかどうか確認してほしい」という意図があります。そのため、できるかぎり早めに添付資料を確認し、返信するのが理想です。
しかし、外出していてすぐに確認できない、内容が多くて時間がかかりそうだ、というときもあると思います。
そこで、すぐに添付資料の確認ができるとき、できないときの2パターンに分けて、それぞれの返信例を取り上げます。
すぐに添付資料の確認ができるとき
すぐに添付資料の確認ができるときは、内容を確認し、その結果を資料を送ってくれたことに対する感謝の気持ちとあわせて返信します。
【例文】
「お送りいただき、ありがとうございます。拝受しました」
「お忙しい中、お送りいただきまして、ありがとうございます。添付の資料を確認いたしました。内容に問題はございません」
「早速ご対応いただきまして、ありがとうございます。ただ確認したところ、◯◯の箇所に記載漏れがあるようです。お手数ですが、ご対応いただき、あらためてご送付願えないでしょうか」
すぐに添付資料の確認ができないとき
すぐに添付資料の確認ができないときは、一旦その旨を伝えるとともに、いつ確認していつ連絡するのかを伝えると親切です。
【例文】
「お送りいただき、ありがとうございます。ただ、現在外出中のため、会社に戻りましたら確認いたします。◯時までにはご連絡しますので、お待ちいただけると幸いです」
「ご査収」はこれからますます重要になる言葉
今日、会社のオフィス以外で働く(≒自宅で仕事をする)テレワークやリモートワークなどが注目を集めています。
今後、「ご査収」は、ますます利用する機会が多くなる言葉でしょう。直接人と会う機会が減り、その代わりにメールなどを介して書類を渡すことが増えると考えられるからです。
「ご査収」の意味を知るだけでなく使い方も身につけておけば、「あれ、このときどう言ったらいいんだっけ?」とメールやチャットで悩むことが少なくなります。
意外と仕事の効率化につながると思うので、参考にしていただければ幸いです。
※こちらの記事の内容は原稿作成時のものです。
最新の情報と一部異なる場合がありますのでご了承ください。
この記事を書いたひと
フリーライター、元書店員。趣味は散歩やDIY。百均やホームセンターがテーマパーク並に面白いことに気づきました。【時間】についてひっそりと研究中です。 Twitterやっています。