「経営理念」とは?
会社の存在意義、使命感、価値観などを表した文言が、経営理念です。例えば、「この組織がどんな目的で事業を行うのか」「こんな使命感で事業を遂行している」と、明文化したものを経営理念と呼びます。
経営理念には、企業の基本的な考え方、スタンスなども表れます。社員はこの経営理念を指針として行動することになります。
例えば、AプランとBプラン、どちらのプロジェクトを選ぶか迷ったとき、基本的には利益率の高さ、会社の成長性などを基準に選択されることが多いです。しかし、ときに経営理念の考え方が基準となり、利益や成長性よりも、経営理念に基づいてプロジェクトのプランが選ばれることもあります。
経営理念はブランディングの礎になることも少なくありません。会社の方向性を示すだけでなく、社会での企業のあり方そのものに関わることもあるのです。
とても重要な経営理念ですが、ときに再定義されることもあります。ずっと同じ経営理念を掲げる会社もありますが、リブランディングによって、内容を再定義する企業もあります。
どちらにしても、経営理念は働く社員にとって、道しるべのようになるものです。
社訓との違い
社訓は、「会社の教訓」です。教訓とは、辞書で調べると「教え諭すこと」と書かれています。社訓はつまり、社長や経営者が社員に示す「教え」ということができるでしょう。「これだけは心得ておいた方がよい」というようなニュアンスで使われ、主に従業員に対して示されるものです。
一方で経営理念は、社外の人に対しても示されます。会社案内に印刷されたり、HPに掲げられたりすることも少なくありません。企業イメージそのものと言ってもいいかもしれません。
企業理念との違い
経営理念も企業理念も、広義では同じです。
では、狭義ではどうかというと、企業理念には創業者の思いが託されています。別の言い方をすれば「信条」と定義することもできるでしょう。
経営理念は再定義されることも多いですが、企業理念は創業当初から変わることがない、普遍的なものです。
ビジョンとは?
ビジョンは、「未来図」「見通し」などと訳すことができる言葉です。チームのビジョンなど、社内のさまざまなところで「ビジョン」という言葉を耳にします。
ビジョンという言葉に視覚的な意味合いが強いため、「売上1億」などの数字よりも、感覚的な要素が盛り込まれます。例えば、「家族の笑顔がある暮らしを想像する企業」という一文をビジョンとした場合、食卓で温かい食事を囲み、子どもの声が響きわたる家族の様子などがイメージできます。
このように、経営理念をより具体的にしたものが「ビジョン」です。
経営理念と同様、指針となるのはビジョンも同じです。時代に即した形に変容していくのも共通しています。しかし、ビジョンは経営理念よりも、社員や組織の成長を目的とする場合が多いです。そのため、ビジョンの設定には、従業員が参加することも少なくありません。
就職活動や転職活動で「経営理念」をどう利用する?
企業研究に活かす
エントリーシートを出す前に、ぜひ、経営理念をチェックしてみてください。企業をじっくりと知るためのヒントになるでしょう。どのように企業が歩んできたのかを読み取ることができたり、会社の雰囲気が伝わってきたりすることもあります。
また、経営理念に基づき、企業がどんな活動をしているかもチェックしてみてください。素晴らしい経営理念を掲げていても、その理念に沿って活動をしているかどうかは、企業によって違うものです。経営理念を守らないからといって問題があるわけではありませんが、指針や軸がないことになります。事業の方向性がコロコロ変わる可能性が、ゼロとは言えません。
自分とのマッチングをチェック
経営理念を読んでみて、どんなふうに感じたでしょうか?
「とてもいい経営理念だ」「いや、なんか違和感がある」「組織体制が古そうだ」など、感想を持ったはずです。
経営理念は、会社の方向性や指標になるものですので、読んで違和感があれば、何かしらのミスマッチがあるのかもしれません。社風が表れていることも多い経営理念は、自分との親和性があるか、一度は考える必要があるでしょう。
会社の雰囲気を表している可能性も
実際に勤めてみると、目の前の仕事が嫌になったり、やりたくないと拒否してみたくなったりすることがあります。そんなとき、経営理念が「働くモチベーション」になることもゼロではありません。
「とてもやりたくないけど、もう少し頑張ってみよう」と、経営理念が背中を押してくれることもあるのです。「そうだ、◯◯に貢献したいからこの会社に入社したんだ」と、初心を思い出すきっかけになることもあるでしょう。
経営理念について質問されることも
採用面接では、「経営理念のどこに共感するのか」といった質問をされることがよくあります。自己PRや志望動機のことで頭がいっぱいになり、経営理念を見落としてしまうこともあるかもしれません。
しかし、もし答えられなければ、「経営理念にも目を通していないなんて、当社に興味がないのだろうか……」と、思われる可能性があります。面接の前には、必ず経営理念に目を通しておいたほうがいいでしょう。
オリジナリティある回答を
「経営理念のどこに共感するのか?」という質問への答えに悩んでいる方は、自分の経験から共感できるものがないか、考えてみてください。オリジナリティがあれば、それが面接官へのアピールにつながります。ただ共感するだけでなく、なぜ共感するのかを考えてみてくださいね。
また、経営理念に沿って行われた企業の事業活動を取り上げて、共感している点について説明してみるのもいいでしょう。「自分が将来目指す姿と、経営理念が合致する」といった切り口でもいいかもしれません。
有名・大手企業の経営理念
ここからは、これから就職活動や転職活動をするあなたのために、有名・大手企業がどんな経営理念を掲げているのか紹介していきましょう。
1. 株式会社不二家
常により良い商品と最善のサービス(ベストクオリティ、ベストサービス)を通じて、お客様ご家族に、おいしさ、楽しさ、満足を提供する
https://www.fujiya-peko.co.jp/company/company/vision.html
お菓子メーカーとして知られる不二家の経営理念はとてもストレートです。おいしい、楽しい、満足を、最善のサービスで提供する。顧客の安心と満足を重視していることが伝わります。
2. ANAグループ
安心と信頼を基礎に、世界をつなぐ心の翼で夢にあふれる未来に貢献します
https://ana.co.jp/group/about-us/vision/
ANAグループは、日本を代表する航空会社です。自社事業を「世界をつなぐ心の翼」と表すことで、一人ひとりの社員の顔が見えるような、温かみのある企業イメージが浮かんできます。
3. 美津濃株式会社(Mizuno)
より良いスポーツ品とスポーツの振興を通じて社会に貢献する。
https://corp.mizuno.com/jp
こちらもかなりストレートな経営理念です。スポーツは健康な生活のために欠かせないもの。より良い製品がうまれることでスポーツライフが快適になり、それが多くの人のスポーツのある生活を支えるという意味です。
4. 日本製鉄グループ
1. 信用・信頼を大切にするグループであり続けます。
2. 社会に役立つ製品・サービスを提供し、お客様とともに発展します。
3. 常に世界最高の技術とものづくりの力を追求します。
4. 変化を先取りし、自らの変革に努め、さらなる進歩を目指して挑戦します。
5. 人を育て活かし、活力溢れるグループを築きます。
https://www.nipponsteel.com/company/philosophy/index.html
経営理念は、このように箇条書きで示されることもあります。サービスや人、製品など、大手企業はさまざまな事業を展開。その分、経営理念のボリュームも大きくなります。
「経営理念」を読み解くポイント
就職活動や転職活動で重要と言われるのは、経営理念から企業のこれからを読むことができるからです。どんな企業像を目指しているのかが読み解ければ、それが自分に合っているのかどうか、判断することもできるでしょう。
“合っている”というのは、「自分がその会社に貢献できるのか」を考えるうえでもとても大事な情報です。経営理念に沿って、自分が目標を見出すことができるのかは、経営理念をきっかけに、イメージしておくといいでしょう。
※こちらの記事の内容は原稿作成時のものです。
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